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◯◯しないと出られない異世界  作者: ワナリ
第一章『怠惰:異世界攻略⁉︎』

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【09】『別れの予感』


「ラナ、後ろに下がってろ!」


 俺は叫びなから、錬成したベレッタM92Fを連射する。

 次の瞬間、9ミリ弾に撃たれたモンスターが、青や緑の血をぶちまけながら草原をカラフルに染めていく。


 スキル――『索敵』!

 俺が念じるのと同時に、すべてのモンスターの位置とその攻撃軌道が、グラフィックの様に視界に予測表示される。


 あらかじめ、スキル『探索』で周囲の地形も調べておいた。

 遮蔽物のないこの状況下であれば、後方のラナが不意打ちを食らう事もない。


 それなら……スキル『隠密』だ!

 俺は姿を消すと、一気にモンスター群のど真ん中まで走り込む。


 あとは仕上げにかかるだけ――。

 スキル『射撃』の力で、こいつらに鉛玉を叩き込む!


 モンスターは残り十体。


 ――それなら!


 と、俺は空いた左手に、もう一丁M92Fを錬成する。


 二丁拳銃の両手撃ちなんて、映画やアニメの中だけだと思っていたが、俺はそれを試してみる。


 ――ドシュッ! ドシュッ! ドシュッ! ドシュッ!


 撃ちながら、片手撃ちによる反動をチェックする。

 45口径弾に比べて威力が小さい9ミリ弾という点を差し引いても、右手も左手もブレる事なくしっかりグリップできている様だ。


 その証拠に、弾丸は正確にモンスターの脳天に二発ずつ叩き込まれている。

 そんな事を考えながら戦う余裕が、今の俺にはあった。


 センチアの固有領域に召喚されて、スキルの意味も分からずに慌てふためいていた頃とは、えらい違いだと我ながら感心してしまう。


「レオさん、お疲れ様です!」


 スキルの効果が切れ、姿を現した俺に向かって、ラナが無防備に駆け寄ってくる。

 なぜなら、もうすべてのモンスターを、俺が狩り終えてしまったからだ。


「今回も、あっという間にこんなに倒しちゃいましたね」


 ラナが目を輝かせている――。

 このモンスターの死骸は、彼女たち家族を養う金になるからだ。


 今日の狩りも、これで五ターン目で相当の収穫量になっている。

 あのアル中の母親の酒代になるのは癪だが、ラナとその妹弟たちがこれでちゃんとメシが食えると思えば、悪くはない。もちろん俺の納屋での宿泊費もここから捻出されている。


 こうしてラナとモンスター狩りを始めて数日経つが、俺の目的は他にもあった。


 ――スキルレベルを上げる事だ。


 抹殺対象だった俺が受肉して転生できたのは、世界すべてを食らわんとする『暴食神』を倒すという、センチアとの契約があったからだ。


 まあ契約内容については、だまされた様な側面もあったので思うところもあるが、とにかくこの異世界に来たのも、ここに分裂体となった『暴食神』がいるのが理由だ。


 その手がかりは、例のお題――、

 

 『◯◯◯◯しないと出られない異世界』

 

 にあるはずなのだが、これまで『洞察』のスキルを使えば簡単に開いた伏せ字が、一文字も開かなくなってしまった。


 おそらくスキルレベルが足りないからだと踏んだククルは、レベル上げのために俺とは別行動を取っている。

 それなら俺も、情報収集と共にレベルを上げるために、こうして毎日モンスターと戦闘に励んでいるのだ。


 スキルレベルは、この異世界に来た当初の10から13にまで上がっていた。

 やはり実戦経験を積むと、レベルの上がり方が早い事を実感する。


 それに副産物といってはなんだが、ついに俺にも新スキルが増えた。

 

 『塹壕:LV13』『爆破:LV13』『撹乱:LV13』『情報操作:LV13』

 

 やはり今回も魔法系は増えず、見事なまでの物理攻撃系ばかりだった。

 いやこの内容、俺、戦争でも始めるんすかね……。

 ともあれスキルレベルは、固有スキル『器用貧乏』のおかげで、また横一線になっている。


 今のところ、レベル13の『洞察』では、まだ伏せ字は開かないが、何かのスキルレベルが上がれば同時に『洞察』のレベルも上がるので、とにかく今はなんでもいいのでレベルを上げる事だ。


 俺がそんな事を考えている間に、ラナは笑顔でナイフを錬成すると、モンスターの死骸を器用に解体していく。

 内容はグロそのものだが、こんな共同作業も板に付いてきたものだと、内心で苦笑する。


 今日もこの後、金になるモンスターの臓器を、市場にある薬屋に売りに行く。


 その道すがらで、ここ何日か『大罪のカルマ』を背負った人間に遭遇したが、思念体で常に随行しているセンチアいわく、

 ――どれも小物。


 だそうだ。


 俺たちの目的は『暴食神』の分裂体だ。『大罪のカルマ』が引かれ合うといっても、『暴食神』に繋がらなければ意味がない。


 やはり伏せ字を開く事が、事態解決への最短距離だと思わざるを得ない。

 それなら、やはりスキルレベルを上げるしかない。

 今、やるべき事はできるだけモンスターを狩り続ける事だ。


 俺のやっている事は、間違っていない――。


「レオさん、準備できました」


 いや、本当に間違っていないのか――?


 笑顔で振り返るラナの顔を見た瞬間、俺の胸がさざ波立つ。


 俺の目的は『暴食神』の討伐だ。

 今こうしてラナといる事も、その手がかりを得るためにスキルレベルを上げたいからだ。


 これは手段だ。目的ではない。

 そしてこの異世界の『暴食神』を倒した時、きっと俺はまた別の異世界に行く。


 ラナを――置いて……。


「さあ、日が暮れる前に市場に行きましょう」


 ラナがそう言って、目くばせしてくる。

 いつの間にか、俺たちの間にはそんな信頼関係が築かれていた。


「ああ、そうだな」


 俺は短く答えると、ラナが梱包した荷物を代わりに持ってやる。

 そんなやり取りも自然になってしまった。


「フフッ」


 ラナが俺を見上げながら、嬉しそうに微笑んでくる。

 それに俺も笑顔を返す。


 やがてくる決別に俺が気付いてしまった事を、彼女に気取られない様に――。


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