表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◯◯しないと出られない異世界  作者: ワナリ
第一章『怠惰:異世界攻略⁉︎』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/114

【04】『ラナという少女』


 ――自分を怠け者だと言う少女。


 だが、全然そんな子には見えない。

 だから俺は、少女の言葉に戸惑ったが、このまま黙っている訳にもいかないので、


「そ、そんな事はねえよ。それよりケガとかしてねえか?」


 と、必要以上に明るく声をかけてやる。


「は、はい。おかげ様で。えっと……」


 俺の名前か――。そう察した俺は、


「俺はレオっていうんだ。お前の名前は?」


 自己紹介と、少女の名前を聞く事で、話の糸口をつかもうとする。


「わ、私は……ラナです。れ、レオさんは、お強いんですね」


「い、いや、それほどでもねえよ」


 女の子に強さを褒められて悪い気はしない。

 少し上機嫌になる俺を、ラナはさらに褒めてくる。


「モンスターの動きが、まるで事前に見えていたみたいですし……。きっとレオさんはすごいスキルをお持ちなんですね」


「――――⁉︎」


 着眼点の鋭さに違和感を覚えるが、俺はそれを表情に出さない。

 なんというか……、実戦慣れしていないと出てこない発想な気がするが――。


 いや、俺の考えすぎか。

 そう思い、気を取り直すが、ラナはさらに被せてくる。


「見た事もない、すごい武器も使っていましたし――。まるで別の世界から来た人みたいですね」


 うわー、ほんとに異世界から来たとは言えねー。

 ほんと、こういう一見、屈託のない子って、ナチュラルに鋭いから油断できねえわ……。


 このままじゃまずい気がした俺は、会話の流れを変えるために、


「なあ、ラナ。お前はどうして、こんな危ない草原に一人で来ていたんだ?」


 と、まず最初に聞くべき、至極真っ当な質問をする。


「それは……」


 ラナは一瞬、口ごもるが、


「この草原には、高く買い取ってもらえる薬草が、たくさん生えているんです。でも、深く入り込みすぎて、モンスターに遭遇してしまいました」


 これもまた至極真っ当な返答をしてくる。


 ここまでなら、まだ普通の会話だったのだが、


「私が――怠け者だから、きっと神様が罰を与えたんでしょうね」


「――――!」


 またラナが、自分を『怠け者』と言った事で、俺の胸はさざ波立つ。


 そこに、


『おい、レオよ』


 という、センチアの念話が飛び込んでくる。


 このタイミングで、ほんとに神様来るか? 


 とツッコんでやりたかったが、


『話の途中で、ワシをほっぽり出すとは……、いい度胸をしておるの』


 センチアの言葉で、俺はラナの悲鳴を聞いて、ここまで一目散に駆けつけてきた事を思い出し、これはまずいと我に返る。

 とりあえず謝っとくかと思ったが、言い訳しようにも当のセンチアの姿が見えない。


『現界がほんとに限界にきてしもうた。じゃからワシはしばらく姿の見えぬ思念体でおるぞ。ワシとは念話で話せるから、心配はするな。とにかく――、お前はこの娘にワシの事を気付かれるな、よ!』


 センチアは手短かに説明を終えると、見えない姿のまま、ポカッと俺の頭を殴りやがった。


「痛てっ!」


「――――? レオさん、どこかおケガでもしたんですか⁉︎」


 突然、奇声を上げる俺を、当然ラナは不審がる。


「い、いや大丈夫、大丈夫だ」


 とりあえずその場を取り繕ってから、


『センチア、てめー、気付かれるなとか言って、何してくれてんだよ!』


 念話でもって、センチアに苦情を訴える。


『フン、この甲斐性なしが。そんなんじゃから、ククルの奴がいなくなるんじゃぞ』


『――――⁉︎ ど、どういう事だ⁉︎』


 センチアの言葉に危なく声を出しそうになったが、なんとか自分を抑えて念話で問いかける。


『スキルレベル上げのために、モンスター狩りに行くと言って消えていったぞ。まあ、今のレベルでは『お題』の伏せ字を、一文字も開く事ができんかったからの――。やれやれ、あの傲慢女も奴なりに、お前を助けようとしとるのに、ボンクラ王のお前がそんなんでは苦労するの』


『ククルが……』


 少々トチ狂ってはいるが、理知的で計算高いククルの献身に胸が切なくなる。

 あいつはあいつなりに、配下として俺の事を思ってくれているのか――。


 と、一瞬涙ぐみそうになるが、


『あと、傲慢女からの伝言じゃ。――『私は一人で、伝説の邪竜とか征伐して、ドッカーンとレベルを上げてきますので、足手まといのダーリンは、その辺のスライムでもチマチマ狩って、チビチビとレベルを上げておいてください』――との事じゃ』


『あ、あのクソ女ーっ!』


 分かっていても、ククルのヤンデレっぷりに怒りが込み上げる。


『あと追伸じゃ。――『もしダーリンが、ザコスライムとの戦闘で死んでも、ちゃんと『女王様のご褒美』が発動しますので、ご安心ください。もちろん――HP1縛りで』――じゃと。プププッ』


 そう言ってセンチアが吹き出すが、それにツッコむ気も起きなくなった。


 『仲良くしないと出られないエレベーター』以来、俺の右足とククルの左足に、それぞれ巻かれた赤い縄――。

 それを経由して、ククルの固有スキルで俺にHPが無限供給されるのだが、設定がHP1なのはもうやめてくれ! あれマジで生き地獄なんですけど……!


 こりゃマジで死ぬ訳にはいかねえな……。

 と、俺が異世界生活への決意を新たにしていると、


「じゃあ、レオさん。助けていただいたお礼がしたいので、私の村に来てください」


 ラナが俺から離れながらそう言った。


「別に礼なんて、いらねえよ」


「そうはいきません。少し待っていてください」


 振り向きながら俺に微笑むと、ラナはスキルで出刃包丁の様なナイフを錬成する。


「――――?」


 何をする気なんだ? と俺が訝しんでいると、スタスタと歩くラナは、俺が倒したモンスターの死骸の前でしゃがみ込みと、


 ――グシュッ!


 手にしたナイフを逆手に持つなり、一気にその腹を一文字に切り裂いた。


「…………! お、おいラナ……。な、何やってんだ……」


 あまりの光景に、俺は激しく動揺してしまう。

 その間もラナはナイフを器用に使って、モンスターの内臓をズルズルと引きずり出す。


 俺の所まで、臓腑の異臭が漂い吐き気を催す。

 それでもラナは平然と、まるで屠殺の様な作業を淡々と続けていく。


「見てください――」


 ラナがモンスターの体液にまみれながら、笑顔でこちらに顔を向ける。


「このキメラの心臓は、難病の薬になるので高く売れるんですよ。これを売って、レオさんにもお礼をしますからね」


 ラナは緑色の不気味な臓器を、宝物の様に俺に見せてくる。


 なんで、そんな笑顔でいられるんだ……⁉︎

 俺は平静を装いながら、内心恐怖に震えていると、センチアが念話でその答えを教えてくれた。


『やれやれ……。あやつも――『大罪のカルマ』を背負っておる様じゃの』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ