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◯◯しないと出られない異世界  作者: ワナリ
第一章『怠惰:異世界攻略⁉︎』

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【01】『いやほんと、なぜこうなった⁉︎』


挿絵(By みてみん)


 見渡すかぎりの草原。

 そして遥か遠くに、かすかに見える中世ヨーロッパの様な街並み。

 空には四つの翼を持つ怪鳥が飛び、草の陰からはゲームの中でしか見た事のないスライムがノソノソと顔を出す。


 これぞまさに純度百パーセントのファンタジー世界。

 疑う余地のない異世界だ。


 ついに来た。俺は来てしまった。

 『出られない異世界』を脱出して――また新たなる『出られない異世界』に………………。

 

「って、なぜだ? なぜこうなったーーー⁉︎」


「なんじゃ。相変わらず、やかましい奴じゃのう」


 叫ぶ俺に、隣でフワフワ浮いた状態のセンチアが、しかめっ面で文句を言ってくる。


「いや俺、お前と契約したよね⁉︎ で、お前神様だよね⁉︎ じゃあ行き先は、神界とかじゃねえのかよ⁉︎」


 キラキラと輝く極楽パラダイスを想像していた俺は、予想に反する再度の異世界転移に動揺している最中だ。

 いや……、俺の存在はもう現世から登録抹消されて、新たに受肉したんだから――これがほんとの異世界転生か……。


「うっわー、マジで転生したのに、俺アラフィフのオッサンのまま⁉︎ 美少年補正とか全然かかってねーじゃん!」


「ダーリン、少し落ち着きましょ」


 思いつくままに不満を叫ぶ俺に、今度は背後に控えるククルが声をかけてくる。

 いや、でもお前は元々補正もいらないくらいの、超絶美少女だからいいけどさー……。


 はあ……。落ち込みついでに、ステータスでも確認してみるか。

 

 HP:300/300 MP:200/200

 

 激戦を勝ち抜いたのと、神の眷属になったせいか、HPとMPは三倍増しになっている。

 

 スキル:『創造:LV10』『錬成:LV10』『洞察:LV10』『探索:LV10』『索敵:LV10』『隠密:LV10』『射撃:LV10』『回避:LV10』

 

 スキルはレベルは上がっているが、新たなスキルが増えている訳ではない。相変わらずの物理攻撃系オンリーだ。


 純度百パーセントの異世界に転生したんだから、もしやと思ったが、やっぱり俺には魔法系スキルは付いていない。これも異世界ファンタジーを全否定してきた報いなのか……。


 だが、そんな俺が異世界での生き残りバトルに勝利できたのは、

 

 固有スキル:『器用貧乏:LV10』『裏読み:LV99』

 

 この二つの得体の知れないスキルのおかげだ。


 『器用貧乏』は一つスキルレベルが上がると、他のスキルも横並びで全部レベルが上がる、まさに俺の器用貧乏人生を象徴した様なチートスキルだ。

 少々、ムカつくが役には立つので、とても助かってはいる。


 もう一つの『裏読み』は、どうやら『隠しスキル』らしい。

 その証拠に神であるセンチアには見抜かれたが、人であるククルにはその存在が把握されていない。


 効果は、俺が誤った選択をすると悪寒でもって警告してくれる、保険システムみたいなモンだ。


 だが問題は間違った後に、『バーカ、間違ってやんのー!』的に発動するので、マジで怖い。

 あと何が間違っていたのかも分からない――。まさに『裏読み』の名に恥じない厄介さだ。


 それでもレベル99という数字が示す様に確実性は高く、この警告に従ったおかげで俺は生き残れたという自覚はある……、あるんだがアップデートは要求したい。プンスカ!


 そんでもって――、そんでもってだ。

 

 『征服特権:LV10』

 

 この度、追加された新たな固有スキルだ!


 こいつのおかげで、俺はククルを配下として契約する権利を得て、一人しか出られない異世界から、二人で出る事に成功した。

 俺自身も神の眷属として、センチアと契約する事が脱出条件だったが、ルールの裏を突けたのも、このスキルあっての事だ。


 それに字面だけ見ると、本格ミリタリー小説を書いてきた俺にとって、あんな事やこんな事もできちゃいそうな魅惑のスキルに思えるんですよ!


 だって征服者って、ハーレム的なものも作り放題じゃない? それに配下って大きな意味で言えば、側室も配下でしょ? 拡大解釈? いやいや、ここは異論は認めん!


 なのに、なのに、なのに、


「征服しても、その世界出ちゃったら、意味ねーじゃーん!」


 俺はまた無意識に、声のかぎりに叫んでいた。


 ハッと気付くと、ククルが俺を見つめていた。

 しかも――何か汚いものを見る様な目で!


「ダーリン……、ゲス……」


 シンプルなフレーズなだけに、破壊力ハンパねー!


「い、いや違うんだククル。俺は――」


 言い訳をしようとする俺に、


「やれやれ、痴話ゲンカなら後でせい」


 センチアが余計な一言をかぶせてくる。


「お、お前なー!」


「シャラップ! ――もうあまり時間がない」


 食ってかかる俺を、センチアが冷静に制してくる。

 それに時間がないって――?


「言うたじゃろ。ワシの現界には――」


「限界があるんだろ。もういいわ」


 時間がないとか言って、余計な事は言おうとするからタチが悪い。


「ううう……!」


「えっ⁉︎」


 センチアの奴、ガチで怒ってやがる。俺、地雷踏んだ? このネタそんなに大事でした⁉︎


 俺の余計なボケ潰しのせいで、状況がこじれそうになるが、


「ミッション……ですか?」


 ククルの冷静な声で、センチアは我に返り、いきなり空中を指差した。


「その通り、ワシの『先読み』が発動するぞ!」


 センチアが空に向けて指をなぞると、見なれた――いや、もう見たくない『例のアレ』が表示される。



 『◯◯◯◯しないと出られない異世界』



 こうしてまた、俺の『出られない異世界』人生は唐突にスタートした。


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