表彰式【07】『異世界脱出――?』
ふ、増えてる……。スキルが!
しかもただのスキルじゃなくて、固有スキルだ!
「ほお、『征服特権』とな」
センチアも、俺の新たに増えた固有スキルに、目を丸くしている。
俺はセンチアの方に、ワンチャン何かスキルが増えていればと思ったが、まさか俺の方に増えているとは――。
だが驚いてばかりはいられない――。まだ勝負は終わっていない!
「ダーリン、おそらくこれが、この異世界を出る鍵ですわ」
「ああ、きっとそうだ!」
ミッション進行を促すククルに、俺も力強く頷く。
ククルは、いつも俺に道を示してくれる――。
今もククルが、俺のスキルを発見してくれなけば、きっと手詰まりになっていただろう。
その思いは無駄にはしない――。このスキルで、俺もククルも一切合切、救ってみせる!
とはいえ――、
「だけど……『征服特権』って、いったいなんの特権があるんだ?」
ひとまず俺は、当然の疑問を口にする。
だって『電撃』とか『火炎』だったら、字面でなんとなく分かるでしょ?
だけど、今回の『征服特権』って、まるで『無料サービス』とだけ書いてて、その対象が明示されていないインチキ広告みたいじゃないか……。
「フム。そりゃ特権といえば……、あんな事やこんな事じゃろ」
頭を悩ませる俺に、センチアがニヤけた顔で言ってくる。
「あ、あんな事や……こんな事……?」
魅惑のキーワードに、思わず俺も乗っかってしまう。
「そうじゃ。あんな事といえば――、そりゃもちろん、チョメチョメじゃろ」
「ちょ、チョメチョメっすか!」
センチアのゲス発想に乗っかり、俺も思わずゲスい想像をしてしまう。
だが、あながち間違ってはいない――。征服者とは、征服地のすべて掠奪する権利があるのだから――。
「――――!」
思わぬヒントを得た俺の頭脳が、フル回転を始める。
すべてを掠奪――。生殺与奪――。人の命も思うまま自分の所有物とできるのが、すなわち征服者……。
「――――⁉︎ そうか!」
ゲス発想のおかげで、スキルの意味が分かった俺は大声を上げる。
「なんじゃ、やかましい奴じゃの」
「ダーリン、何か分かりましたの?」
センチアとククルが、俺の顔を覗き込んでくる。
それに何も答えず、俺は大きく息を吸いながら、不敵に笑う――。
ヘヘッ、おあつらえむきの舞台になったぜ。
そんじゃあ、いっちょブチかますとするか。
俺の――一世一代の晴れ舞台だ!
「いいかー! 俺はこの異世界の勝者――。すなわち征服者だ!」
突然の宣言に、二人とも目を丸くしているが、構わず俺は叫び続ける。
「征服者とはすなわち『王』だ! 今、俺はこの『異世界の王』となったんだ!」
ヤバイ、厨二病丸出しだが、なんか楽しくなっきたぞ。
「王には臣民が――、いや『配下』が必要だ」
「――――⁉︎」
ククルが目を見開いている。頭のいいお前の事だから、もう気付いた様だな。
「征服特権として、ククル! 俺はお前を『配下』とする! これでククルは俺の『契約下』に入った!」
「なんと⁉︎」
今度はセンチア声を上げる。だがその顔がニヤついているという事は、こいつも俺の狙いが分かった様だな。
「さあセンチア、俺と契約しろ! これでお前と契約すれば、俺と契約したククルも『込み』で契約だからな!」
「クククッ、そうきおったか」
俺の申し出に、センチアが楽しそうに笑っている。これで俺は『勝ち』を確信する。
じゃあ――、さっさと『手続き』を済まさねえとなんねえな。
「ククル――」
そう言いながら、俺はククルの両肩に手を置き、その身を引き寄せる。
「は、はい……」
いつもは不敵な面構えのククルも緊張している様子だ。
あらためて見る超絶美少女っぷりに息を呑みそうになるが、ここは一気にいく。
「お前はこれから俺の配下だ。その契約をする――」
「ンッ⁉︎」
何も言わせないままククルの唇を奪う。
これが征服者の力なのか、自分でも信じられないほどの強引さだ。
それに、こんな事が契約になるのかも分からない。
だがそれでもなぜか俺には、これが男の『ケジメ』だと思えたんだ。
ククルも抵抗はしてこない。
生暖かい舌の感触を感じた瞬間、俺たちの体が光の鎖に縛られ、一心同体になったかの様な感覚に襲われる。
「ホホッ、やりおるの。ほんとに契約しよったわ」
他人の情事を覗き見る、近所のオバチャンの様なセンチアの声で、俺たちは陶酔から覚め我に返る――。
どうやらこれで、俺とククルの『主従契約』は成立したらしい。
安心したせいか、離した唇に繋がった糸が、まるで俺たちを結ぶ鎖の様だ――。なーんて、久しぶりに作家みたいな事を思っていると――、突然ククルに頭を掴まれる。
「えっ? ――ブベッ!」
次の瞬間、俺の唇はククルの硬いハイヒールに、キスさせられていた。
「く、ククル?」
「私のミッションは、ダーリンとの『奴隷契約』ですからね。まあ、もうすでにダーリンは身も心も私の奴隷ですが、万全を期するために一応、『ケジメ』をつけておきませんとね。ウフフッ」
そう言って顔の見えないまま、ククルはいつもの様に妖しく笑う。
――えっ、俺は『王』なのに、配下のククルの『奴隷』なんですか⁉︎
いやいやいや、配下の奴隷とか、どんな王なのよ⁉︎
「ふむ、間もなくワシの固有領域も消えるぞ――。さあ来い、レオよ」
続けてセンチアが俺の首を掴んで、宙に放り上げる。
いや俺、征服者なのに扱いひどくねえっすか⁉︎
「汝、レオよ――。汝を我、『強欲神センチア』の眷属として迎え入れん。これより汝は、我に使役されし『僕』となる――」
手をかざすセンチアが、高らかに契約を宣言する。
えっ、ちょっと待って⁉︎ 今、『しもべ』って言いましたよね?
それは聞いてないんですけど。契約書とか事前に確認させてもらっていいですかー⁉︎
焦る俺を無視して、センチアは俺を光で包み込んでいく――。
そして、さらに宣言する。
「さあ受肉せよ! そして行くぞ、新たなる『出られない異世界』へ!」
………………………………。え?
序章、完結しました。ここまでお読みいただき、ありがとうございます。もし本作を面白いと思っていただけましたら、ぜひご評価ください。
また次回より、第一章が始まりますので、ブックマークしていただければ、とても嬉しく思います。
これからも宜しくお願い申し上げます。読者の皆様に深い感謝を。
ワナリ




