表彰式【01】『七つの大罪』
『相変わらず、『強欲』な奴じゃの』
虚空から、幼い声が聞こえた。
『表彰式の準備は、まだできとらんぞ。まったく』
人を食った、この物言い。そして狙いすました、あざといロリババア喋り――。
来た……! 『運営』が出てきやがった!
「表彰式だと⁉︎」
『そうじゃ、お前はこの『出られない異世界』の勝者となった。じゃから主催者であるワシから、その労を労って――』
「そんなもんはいいから、早く姿を見せろ! そして俺の話を聞け!」
運営の話を遮って、俺は叫ぶ――。今はククルを助ける事が最優先事項だ。
『やれやれ、現界は面倒なんじゃが……、後始末もあるしの。まあよいわ』
意味の分からない返答を聞いた瞬間、目の前の空間が、人間の体を形作っていく事に息を呑む。
「――なっ⁉︎」
「さーて、これでよいかの?」
次の瞬間、それまでスピーカーを通していた様な話し声が、突然、リアルな肉声に変わったかと思うと、宙に浮いた状態の少女が――いや幼女が、これもまた突然現れた。
「うわっ! な、なんだ、テメエ⁉︎」
「自分で出てこいと言っておきながら、ずいぶんな言い様じゃのう」
そう言って幼女は妖しく微笑みかける。
だが、この言い回し、態度――。間違いねえ。
「お、お前が――」
「そうじゃ、『運営』じゃよ」
幼女ながら、溢れ出る威厳に圧倒される――。なんだこの半端ねえ存在感は!
俺は言葉が出なくなるが、それでも気合を振り絞って、なんとか口を動かす。
「お前が『運営』なら――。頼む、ククルを助けてくれ!」
「ハアぁー?」
人を食った態度をしてから、さらに『運営』は続ける。
「これは異なことを言うものじゃ。そこのククルは、お前が倒したのじゃろ? それを何故、お前が助ける道理がある?」
「クッ……、正論じゃそうかもしれねえ。でも俺は、こいつを助けてやりたいんだよ!」
「お前は自分が生き残るために、そ奴を――。いや、そ奴だけではない。何人もの相手を殺めてきたんじゃろ? なのに、そ奴だけ助けたいなど……、それこそ道理が合わんわ」
「クッ……」
あまりの正論に、何も言い返せない。
だが俺は、ここで引き下がる訳にはいかない。
「ククルには――、生きる価値があるんだ!」
だから俺の偽りのない気持ちをぶつける。
だが、それに返ってきたのは、
「クッ、クックックッ、クックックッ、アーッハッハッハッ!」
耳が痛くなる様な、『運営』の嘲笑だった。
「な、何がおかしい⁉︎」
「いや、すまん。お前が、あまりに身の程知らずな事を言いよるでの」
「身の程知らず?」
「そうじゃ。お前は、そこの女に生きる価値があると言うたが――、お前も含めて、ここに来た全員は、ワシが『生かす価値がない』と判断した者たちなんじゃぞ」
言っている意味が分からない――。それに『運営』は、『生きる価値』ではなく『生かす価値』と言った。
「お、お前は何様なん――」
「神様じゃよ。お前らの価値観でいうところのな」
「――――⁉︎」
あまりの即答に理解が追いつかない。神――、神だって⁉︎
「ふむ、自己紹介が遅れたの。ワシは七大最高神が一人――『強欲神センチア』じゃ」
目の前の、宙に浮く幼女は一片の迷いもなく、そう口にした。
その瞬間、それまで『運営』を名乗っていた存在が――センチアが、急に神々しく感じ、俺はさらに圧倒される。
「よかろう。まあ最後じゃし、お前には『勝者の褒美』として特別に教えてやろう」
「さ、最後――⁉︎」
聞き捨てならない言葉に、俺は思わず身を乗り出す。
「黙って聞け、人間よ。よいか、この世界……、世界とはお前の知っている地球だけではなく、数多の異世界すべてを含む――真の世界の事じゃ」
俺を制して、センチアは話し始める。
「それを統べる神々の頂点に立つのが我ら最高神――。強欲、傲慢、怠惰、嫉妬、色欲、憤怒、そして暴食の七大神じゃ。お前たちの世界では、『七つの大罪』と言われておるそれじゃよ」
「七つの……大罪……。まさか⁉︎」
「そうじゃ、理解が早くて助かるの。ここに来た者たちは皆、その『七つの大罪』の業を背負った『クズ中のクズ』――。我ら神が『生かす価値なし』と判断した者たちじゃ」
「――――⁉︎」
センチアが明かす真実に、俺はただ絶句する事しかできなかった。




