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◯◯しないと出られない異世界  作者: ワナリ
序章『予選:異世界脱出⁉︎』

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決勝戦【09】『折れない心』


 体が重い。もう動けない。

 なんでだ? 確かに心は折れたが、HPはまだ残っていたはず――。

 

 HP:1/110

 

 地面に横たわったまま、横目で見た自分のHPに愕然とする。

 なんで……1?


「まあダーリンったら、ショックで即死するなんて。もう……、可愛いすぎますぅ!」


 ククルが華やいだ声で、答えを教えてくれる。


 お、俺は……、あまりの絶望にショック死したのか⁉︎

 ハハッ、まあそうか。だって、もうすでに俺の体、瀕死の状態だったもんな……。

 それを逆転の希望だけを頼りに、限界を超えた無茶をしてただけだったのか……。


 ショック死といえばショック死だが……、気力というHPを一気に消化し、当然の結果に行き着いたと言えなくもない。

 いやー、心と体はリンクしてるって、本当だったんだな……。


 自分がここまで、本当に気力だけで戦い抜いていた事を自覚する――。

 いやマジで俺、すげえな……って、いやいやいや、自画自賛してる場合か⁉︎


 よく考えろ。死んだのになんでHP1なの?

 横たわった俺の低い視界に、ククルの左脚に巻かれた赤い縄が映る――。


 ああ……、そういう事ですか……。


 答えはすぐに出た。

 あの『出られないエレベーター』の時と同じ――。ククルは、死んだ俺に速攻でHPを1だけ補給して、蘇生させたのだ。


 これが自動システムなら、ククルはこの展開も予想していた事になる。

 足掻き、足掻き、足掻き切った末に、俺が憤死して、それでも俺はククルの前に醜態を晒し続けなければならない、この生き地獄を――。


 ――俺は……、負けたのか。


 ククルは加虐に溺れながらも、この保険がかかっている事を分かっていたから、HPとMPを減らし続けても余裕だったんだ。

 それを俺は、ククルの心を崩せていると勘違いして……。


 クソッ、やはり奴は天才なのか。

 底辺はどうやっても、天才には勝てないのか!

 足掻いても、足掻いても、足掻いても――、それが報われる事はないのかよ!

 異世界も……、それは同じなのかよ……。

 クソッ、クソッ、クソッ……!


 生きる気力が失せていく――。今、俺は真の敗北を意識し始めていた。

 そんな俺に気付いたのか、ククルは黙って俺を見下ろしている。


 嬉しそうな顔だ――。自分が思い描いた『無様な奴隷』が完成したんだから、無理もないだろう――。

 勝てばなんでも手に入れられる――。ククルは勝者なんだ。その権利がある。

 まあいいや、仕掛けてこねえんなら、ついでにひっそり弱音でも吐かせてもらうか。


 俺は寝転んだまま、自問自答する。


 あーあ、勝ちたかったな……。

 でも負けるのは誰のせいだ――? 分かっている。俺のせいなんだよな。


 俺の実力が足りなかったせいだ。

 器用貧乏の性質そのままに、ここまでやってきたが、真の実力ってのはやっぱり格が違うんだな……。


 俺なりに、やれる事は全部やった。

 銃ではなく、ナイフで挑んでみたり、あと三歩の距離を詰めるために、ジャパニーズロングソードの『背負い刀』を錬成したり――。


 俺の顔の横に転がる、ククルの戦闘で折れてしまった壮麗な日本刀を眺める。


 あれ? なんでここにあるんだ? これって、さっき走り回った先で折られちまったはずなのに……。

 まあ、いっか。いやそれにしても綺麗な刃紋だなあ。これを研ぐって、相当の練度でしょ。


 …………。練度⁉︎


 一度は折れた、俺の心が突然息を吹き返す――。


 冷静に考えれば、日本刀というのは、威力、耐久度共に、世界でもトップクラスの攻撃兵器だ。

 当然、その作成には相当の練度が必要になる。


 方向性は違うが、下手をすれば拳銃を製作するよりも、高い技術を要するのは間違いない。

 俺はそれを『錬成』できた――。しかも折れたにもかかわらず、まだ消失していない。


 まさか――⁉︎

 

 『創造:LV9』『錬成:LV9』『洞察:LV9』『探索:LV9』『索敵:LV9』『隠密LV9』『射撃:LV9』『回避:LV9』

 

 やはりスキルレベルが上がっている!

 どのタイミングで上がったか分からねえが、バトル中に熟練度が一定に達したと認定されたんだ。

 しかも固有スキル『器用貧乏』のおかげで、全部横並びで上がっている――。


 地に伏したまま、俺の脳がフル回転を始める。


 推測だが『創造』と『錬成』のレベルが上がると、MPの消費量も減るんじゃないのか?

 熟練度が上がれば、作業効率も上がる――。それは同時にコストの削減にも繋がる。


 残りMPは32――。


 冷静に思い返せば、リボルバー拳銃の『錬成』に20以上のMPを消費していた俺が、それ以上の練度を必要とする日本刀を『錬成』しても、MPは思ったよりも減っていない――。


 という事は――、今ならこのMP量でも、まだ俺には望みがある!


 まだ終わりじゃない――! 考えろ、考えるんだ!

 そして初心に帰れ。発想を変えるんだ!

 非常識でいい――。ナイフを選んだ様に、普通に考えれば、やらない事も選択肢に入れろ!


 うわっ、急に考え出したら目が霞んできた――。いや、さすがにHP1だもんな。

 まあ、霞んでもここは白一色の無限世界だから、そんなに変わんねえがな……。


 自嘲しながら戻ってきた視野に、ふと表示されたままのスキルの一つが目に入る。

 

 『探索:LV9』

 

 そういえば、これだけは、まだ試していなかった……。


 俺は戦闘開始時に、これを戦場の地形を調べるものと判断した――。いやおそらくそれで間違ってはいない。


 だからこそ俺は、今回の戦闘フィールドである白一色の無限世界で、これを使う事は無駄だと――非常識だと判断した。


 ――だが、もう常識は捨てろ!


 選択肢のすべてを試すと決めた俺は、ククルに気取られない様に、スキル『探索』を発動する。


 …………ま、マジか⁉︎


 次の瞬間、俺はこのフィールドに隠されていた『謎』を知った。


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