決勝戦【04】『無理ゲー攻略』
――いけるか⁉︎
スキル『索敵』で攻撃を先読みし、『隠密』で間合いまで入るという、合わせ技による渾身の一撃。
ククルはまだ俺が見えないらしく、受け身を取っていない。
だが次の瞬間、俺は『何か』の波動を感じる――。
そして俺は気付く。
一瞬、呆然としていたククルの目が、もうハッキリと俺に向けられていた事に。
――気付かれた。それでも、このままいく!
ククルが俺のナイフの軌道から逃れるべく、背をそらす。
それは、まるでバレリーナの様な美しさだった。
これまた規格外の柔軟性に驚いていると、飛び込んだ姿勢のまま、宙に浮いた俺の横っ面に衝撃が走る――。
なんとククルの奴、エビぞっただけでなく、その反動を利用して、カウンターの蹴りを繰り出してきやがったのだ。
「グハッ!」
激痛に叫んだ俺だが、奇襲が失敗したからには即離脱のセオリー通り、顔をおさえながら、みっともなく逃げる。
加えて追撃に備えて、スキル『回避』を念頭にいれておく――。
だが、来ると思われたククルからの追撃は来なかった。
――なぜだ?
警戒を緩めないまま俺が振り返ると、ククルは肩で息をしているじゃないか。
こんなククルは見た事がない。
戦闘において、いつでも余裕のスタイルの、あの絶対強者がだ――。
これで、俺のスキルを活用した攻撃は、想像以上に有効だった事が証明された。
それと同時に分かった事もある。
ククルのシールドは、常時発動ではないという事だ。
銃撃にしろ、斬撃にしろ、シールドは有効なはずなのに、ククルはさっきの俺の攻撃に、それを張らなかった――、いや張れなかったのに違いない。
おそらくシールドが自動発動するには、危機を『視認』しなければいけないのだろう。
スキル『隠密』の有効性が実証されたのと同時に、疑問も湧き上がる――。
ククルは姿を消した俺の姿を、ある瞬間からハッキリとその目に捉えていた事だ。
その原因も、やはりスキルにあると踏んだ俺は、数えきれないククルのスキルを、急いで再度確認する。
――これか!
その中にあった『探知』というスキルに、俺は注目する。
おそらくこれは『隠密』と相殺効果があるのだろう。
俺が感じた『何か』の波動も、きっとこれが発動したからに違いない。
そしてもう一つの推論に行き当たる。
相殺効果があるのに、なぜ直前まで気付かれなかったのか? また、なぜ直前で気付かれてしまったのか――?
それはおそらくレベルの差だ。
ククルの『探知』のレベルは9、俺の『隠密』はレベル8――。
このわずかな差のせいで、俺の奇襲は破られたのだが――、裏を返せば、わずかな差しかなかったから、あと一歩まで詰め寄れたともいえる。
つまり――、あと少しの工夫を加えれば、俺の刃はククルに届く可能性がある!
「今のは、少しだけ驚きましたわ」
そう言ったククルは、前面に複数のシールドを展開していた。
今度のは、自分の意思によるスキル発動だ。
おそらく俺が、射撃による追撃を加えると思ったからだろう――。
これでさらにハッキリした。
やはりククル相手に、射撃による攻撃は有効ではない。
どんなに強力な銃器を用意しても、あのシールドがある限り、正面からでは簡単に防がれてしまうだろう。
これも裏を返せば、正面からでなければ――、かつ気付かれなければ、どんな攻撃も有効だという事になる。
あと注目するべきは、シールドの数だ――。
複数展開しているが、どうやら三百六十度、全方向をカバーする様な数は、さすがのククルでも展開するのは無理らしい。
これらをまとめると、
――ククルの『探知』の網にかからない『隠密』性のある攻撃を、シールドのない方向から加える。
という事になる。
正直、無理ゲーだ。
だがさっき俺は、失敗はしたもののクリア寸前までいった。
だから、望みがない訳じゃない――。
それなら足掻き続けるんだ!
「ちょっとは、実は俺が天才かもって思ったか?」
ククルの動揺が、どれほどのものか測るために、さっきと同じ挑発を繰り返す。
「いいえ、オイタをする奴隷さんには、ちょっとお仕置きをしなくては、と思ったところですわ」
そう言ってククルはシールドの後方で、手にした鞭をまるで生きた蛇の様に振り回す。
ハッタリとも思えるが、いつものククルとも思えない。
とはいえ、この程度で崩れるククルじゃない。
――引き続き、警戒だ!
と思った矢先に、シールドの隙間からククルが鞭を放ってきた。
うわ、これは予想外だ。
だが――、スキル『回避』だ!
スキルというものの感じがつかめてきた俺は、今度も紙一重だがククルの攻撃をかわす。
そして、すかさずスキル『隠密』を発動して、ククルの側面に回り込む――。
はずだったが、シールドが邪魔な分、ククルに接近する前に『探知』の網にかかってしまう。
やばい、またククルが蹴りの体勢に入っている。
おそらく何かのスキルで、身体能力に補正をかけているんだろうが、ククルは物理攻撃の威力もヤバイ!
さっきの蹴りは俺の攻撃をかわしながらだったので、腰が入っていなかったが、今度はしっかりと俺を狙っている。
なので、今度はそのまま突っ込む事はせず、次の機会を伺うために一旦また後方に下がる。
そこから、イタチごっこの様な攻防が続いていく――。
その中でも、俺は考え続ける。
あと一歩、いや三歩届いていない。
それなら、そのあと三歩を縮める手はなんだ⁉︎ と。
銃を錬成する事が頭をよぎり、自分のステータスを確認する。
HP:81/110 MP:48/80
いや、ダメだ。ここまでのスキルの発動で、相当のMPを消費した。
まだ銃で勝てる確証もないのに、『創造』と『錬成』で大量のMPを減らして失敗すれば、もう後がなくなる!
幸いHPの方は、蹴りを一発食らったが、まだ十分に残っている。
もう少し、この状況を――と思いかけた俺は、ふと確認したククルのステータスを見て息を呑む。
HP:275/380 MP:376/500
いったいなんだ、この減り方は⁉︎




