決勝戦【02】『王への道』
どういう事だ――⁉︎
これまで、ミッション達成の目的は、一つだったはずだ。
それなのに二つ目が出現した――。
『運営』の奴、なに考えてやがるんだ⁉︎
だが、ククルはこの異変に対しても、すぐにある事に気付く。
「ダーリン……。これって私とダーリンで、それぞれミッションが違うんじゃないですか?」
「――――!」
言われて、俺も気付いた事がある――。
空中に浮かぶ二つのお題が、それぞれ俺とククルに寄っている事だ。
となると、四文字の方が俺、十文字以上の長文の伏せ字が、ククルの分という事になる。
「ダーリンも気付きました?」
「ああ、どうやらそういう事らしいな……」
「では、それぞれ、自分の分を開きましょうか」
「そうだな。せーので同時にいくか」
「ええ。では、せーの――」
『世界征服しないと出られない異世界』
『女王様となりすべての男を奴隷にしないと出られない異世界』
薄々はそうじゃないかと思っていた。
これは各々の『願い』に――完全に合致している。
そもそも、ここに転移してきた奴らの願いは、みんな『他者排斥』の願いだった。
もちろん会ってねえ奴らの願いは見ていないが、おそらく間違っていないはずだ。
ここに来た奴らは、全員、自分が掲げる理想の『王』になりたがっている――。
俺は、この最終ミッション――決勝戦の『お題』を見て、そう確信した。
となると、明言はされていないが、俺はククルを、ククルは俺を倒して、最後の一人になる必要がある――。
「フフッ、セ◯クスしないと、じゃなくて残念でしたね、ダーリン」
「せっかくの四文字だから、俺もワンチャンあるかなと思ってたんだがな」
軽口を叩くククルに、俺も軽口で返す。
その後、しばしの沈黙となる――。
もう何を言っても引き返せない。
時が経てば経つほど、戦うのが辛くなる。
だからククルは言った。
「では――始めましょう」
ククルが手にしたナイフを空中に投げた。
それがテーブルに刺さるのが合図――、となる前に、
――ガンッ!
俺はテーブルを蹴り上げて、先制を仕掛けた。
別にこれが攻撃になるとは思っていない。
だが機先を制す事で、わずかでも俺が有利になるための時間を稼ぎたかったのだ。
縦向きになったテーブルのおかげで、ククルとの間に遮蔽物ができた。
今回のフィールドは、部屋でも、回廊でも、エレベーターでも、コロシアムでもない。
ただひたすらに白が広がる――地面を除くすべてが果てしない、無限のフィールドだ。
そんな場所で、ククル相手に正面切って戦うなんて自殺行為だ。
だから、まずは俺の態勢を整えるんだ!
HP:110/110 MP:74/80
すでに確認済みだったが、再度自分のステータスを確認する。
爆上がりって程ではないが、前戦で二人と渡り合ったの評価されたのか、まずまずのステータス上昇だ。
あらかじめククルのステータスを確認したのと、さっきの伏せ字を見るのに『洞察』のスキルを使ったので、その分のMPは減っているが、まだ十分に残っている――。
俺はこの場所に来てから、ずっと考えていた。
どうすればククルに勝てるのか、を。
HP:380/380 MP:483/500
まともに考えれば、ククルのこのステータスに勝てる訳がない。
あんだけ長文の伏せ字読んでも、まだこんなにMP余ってるなんて、マジでチートだろ。
おまけにスキルも、高レベルの魔法系のオンパレード。
だが、俺はふとある事に気付いた――。
リアル物理攻撃系の俺のスキルは、ククルの魔法系スキルと被っていない、と。
同じ魔法系なら、レベルが高い方が有利に決まっている。
だが異質のスキルなら、低レベルでもそれが通るのではないか?
もちろん仮説だが、まだ俺はそれを試していない――。
試していないのなら、この絶対不利の状況で試してみる価値はあるはずだ。
『創造』と『錬成』で銃を手に入れた俺は、そのおかげでここまで、なんとか生き残ってきた。
それでもククルには、俺の射撃はまったく通用しなかった。
MPは増加した。『創造』と『錬成』のスキルもレベル7と、前よりも二段階上がっている。
それを駆使して前回のガバメントよりも、さらに強力な、それこそサブマシンガンとかを錬成する事も可能かもしれない。
だがどうしても――それで勝てるとは思えなかった。
ならどうする? ああそうさ、発想を変えるんだ。
どんなに強力なものを錬成しても、銃ではおそらく勝てないだろう。
じゃあ他に何がある? 物理攻撃しか手段がない俺が、銃以外で選択できるものは?
このままテーブルの陰に隠れている訳にもいかない。
下手をすると、テーブルごと強力な魔法攻撃で吹っ飛ばされる恐れだってある。
それにきっと、受け身になったら俺は負けだ。
弱いなりに――俺は前に出なければならない!
その思いを胸に、俺は勝利のための武器を『錬成』する――。
ちょっと卑怯な発想だが、もしこの選択が間違っていれば、固有スキル『裏読み』が悪寒でもって警告してくれるはずだ。
だが、今のところ警告はない。
なら――打って出る!
「あらまあ、ダーリン。面白いものをお持ちですのね」
テーブルから飛び出し、正面に対峙する俺に、ククルが不思議そうに言ってくる。
なぜなら俺が手にしていたものは――、たった一本のコンバットナイフだったのだから。




