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◯◯しないと出られない異世界  作者: ワナリ
第一章『怠惰:異世界攻略⁉︎』

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【66】『生きてこそ』


「レオーっ!」


 粉砕され宙を舞う『神核』の中から、エウロラが現界する。

 その幼い小さな体に、あらためて俺は驚く。

 これが『暴食神』――。そして俺たちが、死ぬ思いで戦った相手なのかと。


挿絵(By みてみん)


 現れた時、憎々しげだったその顔が、次第に穏やかになっていく。

 同時に、その体も砂の様に崩れ始める――。


「ねえ、レオ――」


 エウロラが静かに語りかけてくる。


「世界はね――『混沌』に満ちているんだよ」


 俺にはエウロラが、何を言いたいのかが分からない。


「この世界だって、そうでしょ? レオが王様をみんな殺しちゃったから、新しい王様が決まるまで『混沌』の中で人々は苦しみ続けるんだよ」


『レオ、耳を貸すな!』


 思念体となったセンチアが、念話で警告してくる。


「フフッ、センチアはいつもそう。七大神の筆頭なのに、いつも綺麗事ばっかり言ってた――。でも私は気付いたんだよ。全部、食べて一つにしちゃえば『混沌』は消し去れるって」


『小娘がたわ言を申すな! それで今、世界はどうなった⁉︎ ワシらが抑えておった『大罪のカルマ』が溢れ出し、世界はお前の言う『混沌』をさらに深めておるわ!』


 センチアの念話は、エウロラにも聞こえているらしく、二人の最高神の論戦に俺は息を呑む。


「だからね、私は思ったの。今度は中途半端にしないって。今度こそ私が――、エウロラが世界を全部食べて『無』にしてあげるから」


『させるものか!』


「センチアは相変わらずだね――。でも……、いい『後継者』を見つけたね」


 エウロラの言葉に俺は驚く。


 ――後継者? それは俺の事なのか?


 センチアはそれについて言及してこない。


 呆然とする俺に、


「ねえレオ。この異世界での私はこれで終わりだけど、また次の異世界で待ってるね」


 エウロラが、再会を示唆してくる。


「私の分裂体はたくさんの異世界に散って、そこで復活の時を待っている――。その全部がエウロラだから、もちろん意識も共有している。この異世界での出来事も、全部覚えてるからね」


「…………」


 スケールの大きい話に、俺は言葉が出てこない。

 そうしている間にも、エウロラの体はさらに崩れていく。


 そして――、


「じゃあね、レオ――。また会おうね」


 まるで明日の遊びでも約束する様な口調で――、そう言い終えるとエウロラは『神核』ごと跡形もなく消えてしまった。


『レオ――、よくやった。エウロラを倒したぞ』


 センチアが小さく呟く。

 あまりの事に俺は呆然としたまま、立ち尽くしてしまう。


 だが――、


「ラナ!」


 横たわるラナの姿に気付いた瞬間、俺は絶叫する。


「ラナ、しっかりしろ!」


 急いで、その体を抱き起こす。

 虫の息だが、まだ生きている。

 だが左胸から激しく出血している――。


 エウロラの『神核』を砕くために、俺が放った9ミリ弾は、的確にラナの心臓をも撃ち抜いてしまったのだ。

 分かっていた事だが、俺は自分の選んだ結果に激しく動揺する。


「レオ……さん。エウロラを……倒したん……ですね……」


 ラナが薄く目を開きながら、俺に語りかけてくる。


「ああ、倒した――。みんなのおかげで……、お前のおかげで倒せたんだ」


 俺はそう言って、ラナの手を握る。

 その手は、すでに温もりを失い、冷たくなりかけていた。


「よかった……」


 小さく呟くと、ラナはまた目を閉じる。

 まだ息絶えてはいないが、その命の炎が消えていくのを、俺は肌で感じていた。


 ――何か! 何か手はないのか⁉︎


 俺は必死に考える。

 その時、フッとエウロラが言った言葉を思い出す。


 ――レオがみんな王様を殺しちゃったから。


「――そうか!」


 俺には、まだやれる事があった。

 俺はエウロラの言う通り、魔族だったとはいえ、この異世界を治める二人の王を殺した。

 つまり――今、この異世界の王は俺だ!

 それなら俺には『特権』が付与されている――。


 ――ラナ、待っていろ!


 大きく息を吸うと、


「発動せよ! 固有スキル『征服特権』!」


 力のかぎりの声で、俺は最後の手段を宣言する。


 

 固有スキル『征服特権:LV10』


 

 このスキルの効果は、俺が征服した世界なら、俺が選んだ者を自由に配下にできる。

 その力で、俺はククルとも主従の契約を結んだのだ。


 神の眷属となった俺との契約は、すなわち間接的な神との契約である。

 その力で――、ラナを蘇らせる!


「ラナ……」


 呼びかけながら、力を失ったラナの顔を近寄せる。

 そして――、その唇を奪う。


 口の中に広がる血の味――。

 それはまさに、死を迎えんとする者の味だった。

 それでも構わず、俺はラナと舌を重ね合わせる。


 ――どうか……、どうか生きてくれ、ラナ!


 俺はその間、願い続ける。

 その願いが通じたのか――、


「レオ……さん?」


 唇を重ねながら、モゴモゴと呟くラナの目が開かれた。


「ラナ!」


 俺は唇を離すと、歓喜に涙ぐみそうになる。

 その瞬間、俺とラナがまばゆい光に包まれる――。

 ククルの時と同じく、まるで一心同体になったかの様な感覚だ。


「ラナ! これでお前は、俺の配下としての契約を結んだ! もう大丈夫だ!」


 俺は契約の成功に、安堵の声を上げる。


 だが――、


『レオ! 契約は成立したが、ラナの出血が止まらん!』


「なっ⁉︎」


 センチアの念話で、俺の希望は一瞬で打ち砕かれる。


 ラナの左胸を見る――。

 確かに心臓からの出血が止まっていない。


「センチア、どうしてだ⁉︎」


 俺は思念体となったセンチアに問いかける。


『お前とラナとの主従契約は『征服特権』で成立した――。じゃが『征服特権』は復活スキルではないぞ』


「――――⁉︎ でもククルの時は転生できたじゃねえか⁉︎」


『あれはワシの固有領域で、かつお前たちの存在をすでにワシが抹消しておった『特殊条件』における『裏技』じゃ――』


「そ、そんな……」


『神の眷属となったお前と契約した事で、ラナにも多少の神気が宿ったのは確かじゃ――。じゃが致命傷レベルの傷ではどうにもならん……』


「…………」


 固有スキルの効果を読み違えた俺は、膝をついたまま絶望にうなだれる。

 きっと俺から授けた神気の力も、間もなく消えてしまうのだろう――。


「ラナ……、ラナ……」


 再び目を閉じたラナの名前を呼ぶ事しか、もう俺にはできない。

 そんな無力な俺の隣に、ツカツカとククルが歩いてきた。


 ククルは俺の腕からラナを離すと、その体を地面にそっと横たえる。

 そして激戦を終えたラナをいたわる様に、優しくその頭をなででやった。


 俺がその光景に涙ぐんだ、次の瞬間、


 ――グサッ!


 いきなりククルが、手刀をラナの左胸に突き込んだ。


「お、おいククル! なにやってんだ⁉︎」


 豹変したククルの行動に、俺は愕然とする。

 ククルは俺が傷を背負わない様に、代わりに自分がラナを殺すと宣言していた――。

 だが放っておいても、ラナはいずれ死んでしまう。

 今さら介錯など必要ない。


 だから俺は必死にククルにしがみつき、


「やめろ! やめてくれ!」


 と、ラナにとどめを刺す事をやめる様に懇願する。


 それに返ってきたのは、


 ――ドゴッ!


 会心のアッパーカットだった。


「邪魔しないでくださいまし! 『再生』のスキルを――直接、心臓に送り込みます!」


 殴られながら聞いたククルの声に、俺は目を見開く。


「ククル⁉︎」


「こんな『傷』をこの先、ずっと引きずられても面倒ですからね――」


 そう言ってうつむくククルは、頬を赤くしながら少し困った様な表情をしていた。


「ククル……」


 ククルの素直じゃない優しさを目にし、安堵した瞬間、


「それともダーリン? もしかして私が『浮気相手』を、この機会に始末してやろうとしていた――とでもお思いでしたかぁ?」


 打って変わった鋭い視線に、俺は呼吸が止まりそうになる。


 少しもそう思わなかったといえば、嘘になる――。


 そんな俺の心を見透かした様に、


 ――ドゴッ!


 今度は華麗なボディブローが、俺の脇腹に炸裂する。


「この『貸し』は高くつきましてよ――。ダーリン?」


「は、はい……」


 ここに来て復活した女王様ムーブに、自分がククルの王でありながら奴隷なのだという事を、あらためて痛感した瞬間、


『ようやった、ククル! ラナの生気と、レオが送った神気が繋がったぞ! もう大丈夫じゃ!』


 センチアが、ククルによる蘇生の成功を宣言する。


 そして少しすると、


「んん……」


 ラナが小さな声を上げながら、目を見開いた。


「ラナ!」


 今度こそ俺は歓喜の声を上げる。

 ククルはというと、センチアのお墨付きが出た瞬間、傷口の治療を終えたラナから離れ、そ知らぬ顔でうつむいている――。

 おそらく俺とラナの再会に、水を差さない様に気をつかってくれたのだろう。


 それならと俺は――、


「レオさん――」


「ラナ――。これからは……、ずっと一緒だ」


 微笑みかけるラナに、最高の笑顔で応えてやる。

 後で――、ククルに殴られる覚悟を胸に秘めながら。


『よし! 『暴食神』は倒した――。次の異世界に転移するぞ!』


 そしてセンチアが、異世界転移を宣言する。


 ラナが生きたこの世界――。

 そこにラナの家族はもういない。

 人々を統べる王も、もういない。

 エウロラの言う通り、この世界は今後長きに渡る『混沌』の時代を迎えるのかもしれない――。


 それでも俺に悔いはない。

 エウロラが言っていた『無』を俺は認めない。

 人は生きてこそ、『混沌』の末に何かを掴めるのだから。


 それを俺は、この異世界で知った。

 だから俺は、これから転移する新たな異世界でもエウロラと戦う。

 また傷付くだろう。また何かを傷付けてしまうかもしれない――。


 それでも俺にはかけがえのない仲間がいる。

 いや、かけがえのない仲間を手に入れたんだ。

 ククル、センチア、そしてラナ――。

 俺はボロボロになりながらも、転移の光の中で幸せを感じていた。


 

 こうして俺は、たくさん傷付きながら、たくさんのものを傷付けながら――、かけがえのない仲間と共に世界を一つ救った。






 第一章、完結しました。ここまでお読みくださった皆様に深い感謝を。

 次回より、第二章『嫉妬:謎解き異世界⁉︎』が始まります。


 面白いと思っていただけましたら、ブックマークをしてお待ちいただければ嬉しく思います。またもしご評価をいただけましたら、大変励みとなります。ご意見、ご感想もお待ちしております。


 まだまだ『◯◯しないと出られない異世界』は続いていきます。これからも宜しくお願い申し上げます。


 ワナリ

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