表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◯◯しないと出られない異世界  作者: ワナリ
第一章『怠惰:異世界攻略⁉︎』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

113/114

【65】『怠け者の願い』


「ラナ……」


 俺はラナの体を抱きしめる――。

 もう全身ボロボロで、感覚さえも失いそうだが、それでもラナの温かさが肌から伝わってくる。


「レオさん……」


 ラナも俺に抱きついてくる。

 その目には、涙が溢れかえっていた。


「ラナ、お前の体からエウロラの『神核』を取り除くぞ」


 再会に浸りたいところだが、俺は決着に向かって進まなければならない。

 だからラナの体を離し、心臓と同化した光輝く『神核』に目をやる。


 だがラナが――、それに首を振る。


「どうした、ラナ?」


「もう無理です。エウロラは完全に私の体と同化しました」


「――――⁉︎」


 ラナの言葉に俺は絶句する。


「そんなの――、やってみなけりゃ分からねえだろ⁉︎」


 俺がそう言っても、ラナはまた悲しそうに首を振る。


 薄々は、そうじゃないかとは思っていた――。

 俺があれだけ『強欲のカルマ』を燃やしても、エウロラの『神核』はビクともしなかったのだから。


「レオさん、もうすぐエウロラは成体になってしまいます」


「そ、そんな……」


 分かっていた事でも、認めたくない。


「そうなれば宿主としての私の役割は終わります――」


「そ、それって……」


 分かっている。エウロラの復活はラナの完全なる死を意味している。


「でもレオさんが、必死に私を呼んでくれたから――、最期に私は帰ってこれました」


 そう言って、ラナはまぶしいくらいの笑顔を作る。

 それが輝かしければ輝かしいほど、俺の心は絶望に染められていく。


「レオさん――、私を殺してください。今ならまだエウロラを倒せます」


 そしてラナは、俺がもっとも聞きたくない言葉を口にする。


「ダメだ――」


「今もエウロラは、体を取り戻そうとして、私の体で暴れています!」


 俺の言葉を遮り、ラナが絶叫する。

 そして今度は静かに言ってくる。


「今ならまだ私が、エウロラを閉じ込めていられます――。『怠け者』だった私に……、最後の仕事をさせてください」


「そんな事言うな! お前は誰よりも頑張ってきた! 家族を支えるために一人で働いて、モンスターの臓器を売って……、人殺しまでして――。なんでそんなお前が幸せになれないんだよ!」


 俺は駄々っ子の様にわめき散らす。

 そんな俺にも、ラナは微笑みながら言ってくる。


「私のためにレオさんにも迷惑かけちゃいましたね。本当にごめんなさい」


「バカ言うな! 俺が選んだんだ!」


 俺は叫びながら、思わず涙ぐんでしまう。


「俺はな、前世で家族を、友だちを、すべてを――、全部全部捨てたんだ! もう何も背負いたくねえってな……」


「レオさん……」


「だけど今の俺は違う! 俺がお前を背負いたいって心から思ってるんだ! だから俺に……お前の事を背負わせてくれよ!」


「レオ……さん!」


 ラナも涙を流している。


「レオさん、愛しています――。心から」


「ああ、ラナ。俺も心からお前を愛している」


 俺たちは気持ちを確かめ合う。

 だが、そんな幸せも束の間――、


「ううっ!」


 胸を押さえてラナが苦しみだす。


「ラナ⁉︎」


 慌てる俺に、


「もう時間がありません。もうすぐ私はエウロラを抑え切れなくなります」


 ラナは非情の宣告を突きつけてくる。


「レオさん――。私はエウロラになってしまうなんて嫌!」


「ラナ……」


「最後まで――、レオさんが愛してくれた、レオさんを愛している……ラナでいさせてください」


「――うっ、うううっ!」


 俺は子供の様な嗚咽を抑えられない。

 そんな俺の頬を両手で掴むと、


「それと――」


 ラナは優しい笑顔を向けながら、こう言った――。


「私が……、お母さんが、エルが、アーシャが、カムリが生きた……、『この世界』を救ってください」


 その瞬間、俺の体に力が蘇る。

 それは神の眷属となった、俺に課せられた宿命だったのか――。

 俺の足元には、錬成したベレッタM92Fが消えずに残っていた。


 ――どうして……。


 運命はいつも残酷だ。


 ――だが惚れた女の願いを、叶えてやらなけりゃならねえ。


 そう決意した俺の『強欲のカルマ』が燃え上がっていく。

 そして思う――。


 ――世界を取るか、ラナを取るか。


 ごめんな、ラナ――。やっぱり『二者択一』しなければいけなかった様だ。

 

 『二者択一しなければ出られない異世界』

 

 俺の『強欲』をもってしても、その運命を覆す事はできなかった――。


 両手を広げるラナの背中に、エウロラの気配が漂い始めた。

 本当に間もなく、エウロラの分裂体はラナの体を奪い、完全復活する様だ。


 俺は銃を構え、照準をラナの左胸に合わせる。

 ラナの心臓と完全に同化した――、エウロラの『神核』を砕くためだ。


 光輝く『神核』――。

 その光に照らされたラナの顔は、本当に綺麗だった。


「ラナ――、愛している」


 俺はラナに微笑みかける。


「レオさん――、愛しています」


 ラナも俺に微笑み返してくれる。


 お互いの気持ちを確かめ合った瞬間――、俺は銃の引き金を引く。


 ――パンッ!


 銃声と共に、俺の『強欲のカルマ』の力を乗せた弾丸が、光の帯となって放たれる。


『やめろーっ!』


 エウロラの声が聞こえた気がした。

 次の瞬間、ラナの左胸から光輝く『神核』が粉々に砕け散り、宙を舞った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ