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◯◯しないと出られない異世界  作者: ワナリ
第一章『怠惰:異世界攻略⁉︎』

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【62】『最悪の盾』


「アハハハハッ! そうかー、そうだよねー!」


 エウロラが俺を見ながら、突然大笑いを始める。


「レオには、最初からこうしてればよかったんだよねー」


 そう言いながら、エウロラはラナの背中から生やした上半身を、その本体に潜り込ませる。


「なっ⁉︎」


 俺は愕然とする。

 そこに残ったのは、ラナの体だけだった。


「ねー、レオ。これでもエウロラの事が倒せるかなー?」


 だが、その顔と声はエウロラのものだった。


 ――やられた!


 エウロラは、この最終局面で最上の戦術に気付いてしまった。

 ラナを誤射した事による、俺の激しい動揺――。

 その二度目を、さすがにエウロラは見逃さなかった。


 俺はラナを殺したくない――。

 そのラナの体に、エウロラは潜り込んでしまった。

 すなわちエウロラは――俺に対して、最強の『盾』を手に入れてしまったのだ。


「ほーら、レオー。エウロラの事、撃ってごらんよー」


「――っ!」


 あからさまな挑発にも、俺は何もできない。

 エウロラは今、ノーガードだ。

 撃てば必ず当たる。

 だが、攻撃対象はラナの体だ。

 エウロラを傷付けるという事は、ラナの体を傷付ける事に百パーセント直結する――。

 それでも気合いで、銃をエウロラに向ける。


「ハア――、ハア――」


 呼吸が乱れていく。

 それに構える銃が、カタカタと震えているのが分かる。

 ダメだ――。撃てる訳がない。


「どうしたのー、レオー?」


 そんな俺にエウロラが、いたずらっぽく微笑みかけてくる。


「じゃあ、いい事教えてあげるねー。今ねー、エウロラの『神核』はラナの……心臓のところに、あるんだよー」


 エウロラがラナの左胸を指差すと、そこに光輝く『神核』が浮かび上がってくる。


「お、お前――⁉︎」


 俺は言葉を失う。

 エウロラの奴、なんて事をしてくれたんだ。

 これでエウロラを倒すには、ラナの心臓を撃ち抜くしか方法がなくなってしまった。


「さー、ほらー。撃ちたいなら、撃ってごらんよー」


 勝ち誇った様に、エウロラがニヤニヤと笑う。


 その瞬間、


 ――バシュッ!


 空を切り裂く音と共に、鈍い光がエウロラの左胸に当たる。


「ンンッ――⁉︎」


 エウロラは小さくうめきながら、左胸を押さえている。

 何が起こったのかと、俺は光の来た方向を振り返る。


「油断しましたわね、エウロラ――。まだ私も健在でしてよ」


 そこには片膝をつきながら、腕を前に突き出すククルの姿があった。


 ククルがエウロラの『神核』を射ち抜いた――。

 これで――決着がついたのか?


 そう思いかけた俺の耳に、


「あー、そっかー。ククルは『魔弾』も射てたんだねー。でもそれを『神殺し』に使ってくるなんて、やっぱりククルは鬼畜なんだねー」


 エウロラの楽しそうな声が聞こえてくる。


 そしてエウロラはまるでホコリでも払う様に、左胸をパタパタとはたくと、


「――――⁉︎」


 そこに傷一つ負っていない『神核』が、いまだ光り輝いている事に俺は声を失う。


「そうだよねー、ククルならラナを殺せるもんねー。でも残念だったね――」


 エウロラはそう言ってニヤリと笑うと、


「エウロラは、もうほとんど成体になっちゃった――。だからレオ以外じゃ、もうエウロラを殺せないんだよー」


 衝撃の事実を、嬉しそうに突きつけてくる。


 まだ幼体の時、ククルはエウロラと互角以上の戦いを展開し、かなりのダメージも与えていた。

 だが今、魔の力を帯びた『魔弾』を用いても、ククルの攻撃はエウロラに通用しなくなってしまった。

 それはエウロラが、ほぼ成体に近付いたという事を、本当に裏付けていた。


 体はラナのものでも、その中身は成体のエウロラになろうとしている。

 このままでは、ラナはエウロラに取り込まれ命を失ってしまう――。


 ――どうすればいい?


 呆然と立ちつくす俺に、


「あっ、そーだー!」


 と、エウロラが何かを思いついた様に笑いかける。


「レオには、もーっと面白い事をしてあげるね」


 そう言ってエウロラが、両手で顔を隠した。


「ウフフ――。じゃーん!」


 そしてエウロラが両手を開くと――、その顔がラナのものに変わっていた。


「――――⁉︎ お、お前……!」


「どう? これで頭の先からつま先まで、エウロラはぜーんぶラナとおんなじになったよー」


 ガクガクと体を震わせる俺に、エウロラはラナの声でそう言ってくる。


 ラナを殺せない俺に、さらにエウロラは最上の戦術を取ってきた――。

 これは――、完全に詰んだ。


「んー? どーしたのー、レオー? もしかして戦意喪失ってやつー?」


 動けなくなる俺に、エウロラはラナの顔で不満そうに頬をふくらませる。

 だがそれにも俺は何も言い返せない。


「ハア、つまんなーい。もー、いいよー。エウロラ、一人で遊ぶから」


 エウロラの――、ラナの体から鈍い光が放たれていく。


「エウロラ、ラナの『限界突破』気に入っちゃったんだよねー。だからレオは『限界突破』で殺してあげるねー」


 ラナの手に、大鎌が錬成される。

 そしてラナの顔が不敵に笑う――。


 それがエウロラに乗っ取られたものだと分かっていても――、俺にはただ呆然と立ち尽くす事しかできなかった。


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