【59】『合体』
意識が途切れる――。
そして回復する。
この繰り返しの感触は何度経験しても、やはり胸糞悪い。
ククルの固有スキル『女王様のご褒美』によるHP供給――。
そのおかげで俺は、エウロラから受けた致命傷から蘇生した。
だが覚醒から意識喪失への繰り返しが、今回は早い気がする。
ククルも今回は俺を弄ぶ事もなく、供給できるだけのHPを、懸命に送ってくれているはずなのに――。
つまりは俺の受けた傷は、それでも追い付かないほどの致命傷という事なのだ。
霞む目でステータスを見ると、HPが0と50の表示を、目まぐるしく繰り返している。
「アハハ、これがククルの固有スキルなんだねー。レオ、振り子みたいにガクガク震えて面白ーい」
俺の状況に、エウロラはご満悦だ。
人間の生き死にの繰り返しを、目の前で見て笑っていられるなんて、やはりこいつは頭がイカれてやがる。
幼いとかいう問題じゃない――。
最高神の力が――、その精神をねじ曲げてしまっているのだ。
きっとそれは、俺が『大罪のカルマ』を背負ってしまったのと同じなのだろう。
――それなら俺たちは、『同じ穴のムジナ』か?
結構だ。なら俺は、お前を道連れにしてやるよ!
意気込みはすれど、状況は最悪だ。
錬成したステアーAUGは、すでに消えてしまっている。
新たな武器を錬成する力も、もう俺には残っていない。
だがな――、武器ならまだある。
この俺の――拳がだ!
エウロラは、まだ俺に鎌を刺したまま目の前にいる――。
すなわち距離は直近――ゼロ距離だ。
エウロラは、死と蘇生を繰り返す俺に、まったく警戒していない。
だがそう考えている間にも、覚醒と意識喪失のターンが短くなっている。
これは相当、傷がひどい証拠だ。
疲労ならともかく、傷は『再生』のスキルで根本的に治療しないと、穴の空いたバケツと同じで、いくらククルがHPを供給してくれても、すぐにまた死んでしまう――。
残念ながら、俺に『再生』のスキルはない。
頼みのククルも、瀕死の状態で身動きがとれない。
間違いなく状況は、この後さらに悪化していく。
なら、俺がまだ動けるうちに――、最後の勝負を仕掛けてやる。
気合いだ、気合いだ、気合いだ! 目を開けろ、死に取り込まれるな――!
俺は歯を食いしばり、意識を生に集中する。
視界の上には、エウロラの胸に光る『神核』が無防備にキラキラと輝いている。
そのエウロラは、まだケタケタと笑っていやがる。
――ターゲット……、ロックオン。
俺の目が『神核』を捉える。
――いくぜ! せーのー!
もう声も出せない俺は、心で気合いを入れると、
――ドゴッ!
残るすべての力を振り絞って、エウロラの『神核』を殴る。
渾身の右ストレートだった。
同時に、
――メキッ!
という感触が、俺の拳を襲う。
これは、指の骨が全部折れたに違いない。
徹甲弾でも撃ち抜けなかったものを、素手で全力で殴ったのだから、当然の結果だろう。
そのまま俺は膝から崩れ落ちる――。
ダメだ、もうマジで力が入らない。
「あーーーっ! あーーーっ! 痛い、痛い! 痛いーっ!」
『神核』を殴られたエウロラが胸を押さえて、叫びまくる。
だが、そこまでだった。
分かってはいたが、エウロラはまだ生きている。
これで即死してくれれば、俺も真のヒーローだったんだろうが、現実は甘くはなかった。
エウロラが回復すれば、今度こそ本当に終わりだ。
もう俺は膝立ちのまま動けないし、ククルとセンチアも力を使い果たしている――。
――クソッ、せめてもう一発殴ってやりてえ……。
無念の思いから、砕けた右拳を見ると――、そこから炎の様な光が放たれていた。
「――――⁉︎」
反射的にエウロラを見ると、ラナの体の上に生えるエウロラの体が――、うっすらとだが部分的に崩れているではないか⁉︎
「お前ー、何をしたー⁉︎」
苦しみ悶えるエウロラが、俺を睨みつける。
だが俺にも分からない――。
なぜ俺の拳が、徹甲弾以上のダメージをエウロラに与えられたのか⁉︎
生と死を繰り返しながら、俺は呆然となる。
その中で思う――。
――もう一撃、叩き込むんだ!
消えぬ闘争本能に支えられ、残った左拳を上げようとする。
だが途切れ続ける意識の中で、俺の腕はただブラブラと揺れているだけだった。
エウロラは、まだダメージのため動けない――。
今が――、最後のチャンスなのに……。
――ここまでなのか。
諦めかけた俺の背中に、衝撃が加わる。
一瞬、エウロラの攻撃かと思ったが、そのエウロラはまだ俺の正面で悶え苦しんでいる。
しかも背中を貫かれた感覚はあったが、不思議と不快な感触ではなかった。
――いったい何が?
呆然とする俺の耳に、
「諦めるな、レオ!」
という、絶叫の様なエールが飛び込んでくる。
驚き振り向くと――、すぐそこにセンチアの顔があった。
「なっ――⁉︎」
状況が判明した俺は愕然とする。
センチアが――、俺の背中から上半身を生やしている。
それは目の前の、エウロラとラナの状態と一緒だった。
――おい、マジか⁉︎
まさかこんな事になるとは、予想もしていなかった――。
さっきの衝撃は――、センチアが俺と合体した事による衝撃だったのだ。




