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◯◯しないと出られない異世界  作者: ワナリ
第一章『怠惰:異世界攻略⁉︎』

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【57】『俺が俺であるために』


 エウロラに向かって俺は駆けていく。


 ――センチアでも勝てなかった。

 ――ククルは負けた。


 そんな相手に、俺は立ち向かうんだ。

 だが、もう怒りを抑えられない。


 生気を失い、トーテムポールの支柱の様にされたラナ――。

 その背中から、上半身だけを出して笑っているエウロラを、俺は許さない!


「よくもラナの体を弄んでくれたな!」


 走りながら叫ぶ。

 エウロラは最高神でありながら、人間の体を道具の様に使った。


 ラナの股ぐらから顔を出したエウロラの姿は、思い出しただけでもゾッとする。

 こいつは自分の『暴食』という欲望のために、ラナに寄生し、そしてその尊厳を踏みにじったのだ。


 本来、『七大神』は、七つの『大罪のカルマ』を制御するための最高神であると、センチアは言っていた。

 なのにこいつは、自ら『大罪』に溺れようとしている。


 すべてを食べて『無』にすれば、『混沌』が一つになると、エウロラはエウロラなりの理論を述べていたが、到底認められるものじゃない。

 たとえそれがガキのたわ言であろうと、許せないものは許せない。


 ダテに俺も、アラフィフのオッサンをやってる訳じゃない――。


 ――ここはダメなものはダメと、大人がちゃんと叱ってやらねえとな!


 意気込む俺は、スキル『隠密』で姿を消す。


「ほえっ?」


 エウロラは、それに素直に驚いている。

 ほんとにこいつは幼いのか、自信過剰なのか、まったく俺のスキルを警戒していない。


 だがそれでも、行き当たりばったりの対応で、エウロラはククルを破った――。

 その天性の戦闘センスは警戒しなければならない。


 ――スキル『塹壕』!


 今度は、エウロラの周囲を転々とほじくり返す。

 本来なら、ここにスキル『爆破』を仕掛けたいところだが、エウロラはラナの体と融合している――。


 まとめて吹き飛ばす訳にはいかないし、周囲にはまだ王弟軍の兵たちもいる。

 王弟軍を同士討ちさせておきながら、今さら言うのもアレだが、必要のない犠牲は出したくない。

 だから今回の『塹壕』は、俺の射撃ポイントの確保が目的だ。


 続いて、俺はステアーAUGを錬成する。

 本当は対物ライフルを使いたかったが、今の俺の錬成精度では、ククルの鞭で引き金を引くという裏技なしでは、危なっかしくて使えない。

 それでもステアーのM995徹甲弾なら、ベレッタの9ミリ弾よりも威力がある。


 塹壕に潜ると、俺はスキル『索敵』を使って、エウロラの迎撃軌道を検索するが、軌道表示がまったく出てこない――。

 つまりエウロラは――、俺の動きに呆然と立ち尽くしているという事だ。


 ――それなら先手必勝だ!


 俺は側面の塹壕から体を出して、引き金を引く。

 もちろん『隠密』のスキルをかけたままでだ。

 距離は約二十メートル――。この距離なら外さない!

 激しい射撃音と共に、M995徹甲弾がエウロラの横っ面に吸い込まれる。


「いったーい!」


 不意を突かれたエウロラが、横殴りのパンチを食らった様に、顔をのけぞらせながら、ようやくシールドを張る。

 そのせいで、残りの弾丸はシールドに弾かれた。


「レオ、どこ⁉︎ ずるいよ、出てきなよ!」


 エウロラが顔をしかめながら、周囲を見回している。

 普通なら、弾丸の軌道から俺の位置を割り出すはずだ。

 だから俺は『塹壕』を複数作って、『隠密』のスキルと共に、居場所をくらまそうと考えたのだ。


 なのにエウロラは、俺の位置が分かっていない。

 一瞬、俺をおびき出すためのブラフかとも思ったが、エウロラにそこまでの考えはないはずだと思い直す。


 だが、さっきのベレッタの銃撃もそうだが、ステアーの徹甲弾もいとも簡単に当たった。

 しかもシールドが、まったく間に合っていなかった――。


 これは俺の推測だが――、魔法世界において俺の物理攻撃は、イレギュラーな存在なのではないか?


 その根拠は、センチアの放った光弾だ。

 あれにはエウロラは、すぐに防御シールドを張っていた。

 なのに俺の銃による攻撃には、ワンテンポもツーテンポも対応が遅れている。


 おそらくだが、銃というツールは異世界では未知の存在のために、対応策が構築されていないのではないか?


 とはいえ相手は神――、しかも最高神だ。

 回数を重ねれば、必ず順応した上で、なんらかの対応策を構築するだろう。


 エウロラは、かなり成長はした様だが、成体にはなっていないはずだ。

 その証拠に、まだラナの体に寄生している。

 ククルの魔法攻撃や、蹴り技の物理攻撃も、当たればかなりのダメージを与えていた。

 幼体である今なら、まだ倒すチャンスはあるはずだ――。


 おそらく寄生主であるラナの心臓を撃ち抜けば、エウロラも消滅するだろう。

 ククルもラナを殺す事で、エウロラを倒そうとしていたのだ。

 エウロラは、いまだ俺に無防備にその身を晒している――。

 今の状況なら、おそらくそれは可能だ。


 スキル『隠密』をかけたまま、エウロラの背後に設置した塹壕に潜り、ステアーAUGを構える。

 そして照準をエウロラ本体の下にある、ラナの背中――心臓の位置に合わせる。


 今、引き金を引けば、すべてが終わるのかもしれない――。

 だが同時に、俺という存在も終わってしまうだろう。

 なぜなら、俺はすべてを救うと決意したからだ。

 今、安易な勝利を拾っても、俺はきっと自分を許せなくなる――。


 だから照準を、エウロラ本体に合わせ直す。

 世界一つと、惚れた女を天秤にかけるなんて、我ながらトチ狂っているのかもしれない。


 ――それでも俺は、ラナの事も必ず救う!


 俺の中の『強欲のカルマ』が、また燃えたぎるのを感じる。

 その瞬間、体に力がみなぎってくる。


 ――まただ。いったい、なんなんだこの感触は⁉︎


 全身を襲う変化に戸惑った瞬間――、俺の目にエウロラの背中に光る物体が見えた。


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