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◯◯しないと出られない異世界  作者: ワナリ
第一章『怠惰:異世界攻略⁉︎』

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【55】『全部まとめて救ってやる!』


 信じられない光景だった――。


「ねえ、驚いたー?」


 悪夢の様なエウロラの声――。

 シールドの重ねがけという奇策で、エウロラを拘束した――ククルの背中が貫かれていた。


「な……?」


 ククルも背後を振り返りながら、事態が理解できずに呆然としている。

 エウロラは正面にいたはず――。

 なのに今、まさにとどめを刺そうとした、エウロラ本人がククルの後ろにいる。


「フフン。ククルのズルを、エウロラも真似したんだよー」


 エウロラが無邪気に笑う。

 その体が、ククルの背後の地面から伸びていた事に、俺は驚愕する。

 それはまるで大地から、エウロラという生物が生えてきたかの様だった。


「うーん、やっぱり『傲慢』の味はイマイチだなー」


 ククルの背中を貫いた手刀を引き抜き、その手についた血を舐めながら、エウロラが顔をしかめる。

 その瞬間、ククルが膝から崩れ落ちる。

 同時にククルが張ったシールドも、砂の様に消失していった。


「ウフフッ。これでエウロラの勝ちだねー」


 そう言いながら、エウロラの体が地面に潜っていく。


「――――⁉︎」


 俺は自分の目を疑った。

 シールドが無くなったせいで、明らかになった全貌――。


 エウロラが乗っ取ったはずの体が、ラナの姿に戻っている。

 そのラナのスカートの中から――、エウロラの上半身が逆さまに、ぶら下がっている⁉︎


「ククルは鞭を地面に潜らせたけど、エウロラは自分で潜っちゃったもんねー」


 まるで遊具で遊ぶ子供の様に、体を左右に揺らしながらエウロラははしゃいでいる。

 その体が――、ラナのどこから生えているのかと考えると、俺はおぞましくなる。


 エウロラは、ククルの拘束から逃れられないと判断すると、瞬時にラナの体から本体を、地面に向けて飛び出させたのだろう。

 だが、ククルが鞭を地面に潜らせたのを真似して、自分の体を同じ様に地面を潜らせるなど、やはり発想がブッ飛んでいる。


 それはククルにやられたのと同じ手で仕返ししたいという、無邪気な思いつきだったのだろうが、間違いなくエウロラにも天性の戦闘センスがある。

 でなければ、目の前まで見えた勝ちを、ククルが奪われたりはしない――。


 即死はしなかったものの、手刀で背中を貫かれた事で、ククルは膝立ちのままもう動けない。


「あーっ、ちょーどいいやー」


 ラナのスカートの裾を掴んで、逆さまの顔を半分隠すエウロラの目が妖しく光る。


「この姿勢は……、首を刎ねやすそうだねー」


 そう言い終えると、エウロラの体がシュッとスカートの中に吸い込まれる。

 次の瞬間、今度はラナの背中から、ニョキッとエウロラが生えてきた。

 それはまるで人間トーテムポールを見る様だった。


 もう所有権が完全に移ったのか、ラナの顔はずっと無表情で目に光がない。

 そのラナの手が、大鎌を振り上げる。

 ククルはまるで、罪人が斬首される様な格好になっている。

 そしてラナの体の上の、エウロラがニタリと笑う。


「フフッ。今度こそ、その首刎ねてあげるからねー」


 その瞬間、俺は無意識に立ち上がっていた――。

 俺を拘束していたククルの縄は、シールドと一緒に消えていたのだろうが、そんな事はどうでもいい。


 ――急げ!


 俺は無我夢中で銃を錬成する。

 ベレッタM92Fの、9ミリ弾が通用するかどうかの計算もしていない。

 とにかく必死だった。

 ククルを救わなければならない――。

 その一念だけで、銃の引き金を引く。


「ククルー!」


 叫びながら、撃って撃って撃ちまくると、9ミリ弾が次々とエウロラの顔面を直撃する。

 そしてすぐに弾倉は空になり、スライドストップがかかった。


「いったーい!」


 エウロラが顔を抑える。

 だが頭が吹っ飛んだ訳ではない。

 俺が撃った9ミリ弾は、エウロラの顔面を捉えたが全弾弾かれていた。


 おそらくエウロラにとっては、BB弾か銀玉鉄砲が当たったレベルのダメージなのだろう――。

 それでも――意味はあった!


「ククル!」


 エウロラが顔を抑えた隙を突いて、まるで鷹の様に、センチアが上空からククルの体をさらっていく。


「あーっ⁉︎」


 目の前を飛び去るセンチアに、エウロラは驚くがもう遅い。

 センチアはククルを抱えたまま、俺のそばまで飛行してくると、ゆっくりとその体を地面に横たえる。


「ダーリン……、不覚でしたわ」


 開口一番、敗戦を謝罪するククルに、


「もういい。あまり喋るな」


 HPが50を切っていない事を確認して、少し安心した俺はそう言いながら頭を撫でてやる。


 ククルには俺の不甲斐なさを、すべて背負わせてしまった。

 こんなにボロボロにしてしまって――、謝らなけばならないのは俺の方だ。


「どうするおつもりですか?」


 そんな俺に、ククルは心配そうに問いかけてくる。

 正直、俺も困惑している。

 そもそも俺には、ラナを殺す覚悟がなかった。

 それを肩代わりする存在がもういない――。

 ククルはその事を指摘しているのだ。


 側にいるセンチアも、苦々しげに肩を落としている。

 口には出さないが、もうセンチアも限界なのだろう。

 元々が思念体なのに、王弟戦で予定外の現界をさせてからの、まさかのエウロラ戦では無理もない。


 みんな懸命に戦ったんだ――。

 だが、俺はどうだ?


 自分が傷付くのを恐れて、決着を他人に委ねた俺はどうなんだよ?

 傷付き疲れ果てた、ククルとセンチアを目の前にして、何も思わねえのかよ⁉︎


 顔を上げ、エウロラと同化したラナの方を見る――。

 望まなかった運命のために、まるでラナは化け物の様になってしまった……。

 なのに俺のために、ラナは決着をつけると、自害まで試みてくれた。


 ラナも懸命に戦ってくれたんだ……。

 そんなラナを――、見捨てられるかよ!


 俺は立ち上がり、ククルとセンチアを交互に見る。


「ククル、センチア、すまなかった――。後は俺に任せろ」


「ですが、ダーリン。あなたはラナを――」


「ああ、殺せねえ。それに――、殺したくもねえ」


「…………?」


 俺の言葉に、ククルもセンチアも呆然としている。

 だが俺はもう決めたんだ――。


 俺は固く拳を握りしめると、その決意を力強く宣言する。


「俺はこの異世界も、ラナの事も――、全部まとめて救ってやる!」


 そう言い終えると、俺は自分の中にある『強欲のカルマ』が、激しく燃え上がるのを感じていた。


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