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◯◯しないと出られない異世界  作者: ワナリ
第一章『怠惰:異世界攻略⁉︎』

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【53】『矛盾点』


「くあああーーーっ!」


 エウロラが意味不明な奇声を上げる。

 その瞬間、エウロラの前に、複数の魔法陣状のシールドが展開される。


 だが、その形はどれも(いびつ)で、かつ鮮明ではない。

 どうやらククルの鞭に拘束された状態で、エウロラは完全なシールドが構築できない様だ。


 そこにククルが放った電撃、火炎、氷結の弾丸が次々と炸裂する。

 スパークする火花、飛び散る火の塊、砕けた氷のせいで視界が阻まれ、様子がよく分からない。


 そして轟音と共に続いた、激しい連射が終わると――、


「う、うう……」


 エウロラはうめき声を上げながらも、まだ健在だった。


 だがシールドを破られて、相当の攻撃を食らったらしく、衣服は破れ全身傷だらけになっている。


「チッ!」


 仕留め切れなかった事に、ククルが舌打ちする。


「…………」


 俺は、顔はエウロラでも、ラナの体が傷付いた事に心を痛める。

 それでもエウロラを倒さなくては、この世界が滅ぶ。

 俺の代わりに戦ってくれているククルも、きっと同じ様に心を痛めているはずだ。

 あの舌打ちも、一息でラナを殺してやれなかった事に対してだと、俺には分かる。


 だからこそ俺は、


「ククル、攻撃の手を緩めるな!」


 と、歯を食いしばりエールを送る。


「ええ、当然ですわ!」


 ククルもそう答えながら、前に出る。

 おそらくククルは、一撃必殺で勝負を決める気だったのだろう。

 果たして、二の手は用意してあるのか――?


「もう怒ったからね!」


 五体を拘束する鞭を引きちぎったエウロラが、ククルを迎え討つ。

 そのまま近接戦になると、ククルは足を跳ね上げ、上段蹴りを放つ。


「くうっ!」


 よけきれず、腕でディフェンスしたエウロラが苦悶の声を上げる。

 そのままククルは、スカートをひらめかせながら連続蹴りを叩き込むと、エウロラは防戦一方となる。


「もー、なんでエウロラがお前なんかにー⁉︎」


 押され続ける事が理解できないエウロラが、子供の様に金切り声を上げる。

 正直、俺にも理解できない。

 なぜ分裂した幼体とはいえ、最高神を相手にククルが圧倒できているのか――?


「これだからメスガキは低脳ですわね」


「あー、またエウロラの事、バカにするー!」


 呆れ顔のククルに、エウロラはますます逆上する。


「考えてもみなさいな。あなたが宿主としたラナのステータスは――、そこいらの少女程度の力しかないんですわよ」


「ほえっ⁉︎」


 ククルの指摘に、エウロラが素っ頓狂な声を上げる。


「それをまだ成体になっていない、あなたが乗っ取ったところで、ステータスはラナのままですのよ」


「うーっ! ククル、ずるーい!」


「何もずるくはありませんわ――。もう少し黙ってラナの中に隠れていればいいものを、王弟が死んで『混沌』を目にした途端、空腹に耐え切れずノコノコと幼体のまま正体を現して……。だから低脳と言って差し上げたのですわ」


 そう言った瞬間、ククルの回し蹴りがエウロラの顔面をクリーンヒットした。


「ぐえっ!」


 激しい衝撃に、エウロラが吹っ飛ぶ。


「いったいなー、もー!」


 転げ回った先で、起き上がるエウロラを、今度はセンチアの光弾が襲う。


「はわわわわ!」


 シールドを張る間もなく、再び転げ回りながらエウロラが無様に逃げる。


「もー、エウロラが元に戻ったら、お前らなんてコテンパンなのにー!」


 エウロラが悔しそうに地団駄を踏む。

 センチアが言っていた様に、やはりその精神構造は幼児そのものだ。

 だが幼いゆえに、計算もできずに姿を現したのは、こちらにとっては行幸だった。


 今なら――ククルでもエウロラを殺れる。

 俺はエウロラが現れた時点で、ただ動揺してしまったが、状況を冷静に判断して、勝算を見出したククルには本当に頭が下がる。


 時間が経てば、エウロラは完全復活する。

 ここで一気に勝負を決めなければ、やがてこちらが詰むだろう。


 それをククルも分かっているから、追撃の手をゆるめない。

 長鞭、バラ鞭、魔法系攻撃の連続技で、次第にエウロラを追い詰めていく。


「もーっ、ラナほんとに弱いーっ!」


 エウロラが、ラナのステータスを開きながら叫ぶ。

 口ぶりからして、おそらくエウロラは、ラナのステータスをよく確認していなかったのだろう。


 いくら幼いとはいえ、無邪気を通り越して、無計画にもほどがあると呆れてしまう。

 だが――、そんなエウロラも、ついにラナの抱える『ある矛盾点』に気付いてしまう。


「ラナ、人殺しする時、あんなに強かったのになんでー⁉︎」


 単純な発想だが、それが核心だった。

 そこに考えが至った事に、俺はまずいと顔を歪める。


「あれー? ラナ、固有スキル持ってたんだー。なになに――『限界突破』?」


 空中に表示されたスキルのページをめくりながら、エウロラは首をかしげている。


「チッ!」


 ククルもまずい展開を察知したらしく、勝負を決めるために、ハイジャンプからの長鞭による一撃を加えにいく。


「うわっ、なにこれ⁉︎」


 自身の体から発せられる鈍い光に、エウロラが驚いている。


 それからニタリと笑うと、


「なるほど、そういう事だったんだー」


 と、その目の色が変わった。


 それでもククルは、もう打撃体勢に入っている。


「もらいましたわ!」


 高さ、スピード、位置取り――すべてが完璧だ。

 この一撃が決まれば――、勝負がつく!


 そう確信した瞬間、


「がはあっ!」


 一瞬でククルの体が、宙に浮いたまま蹴り上げられていた。


 その傍らで、足を上げた姿勢のエウロラが笑っていた。


「アハハハハー。エウロラ、分かっちゃったよ――。『限界突破』ってすごいんだねー」


 ついに謎を解いたエウロラ――。

 その無邪気な笑顔に、俺は背筋が凍るほどに恐怖した。


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