表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/35

番外編:猛獣になった第二王子(20)

その後恙無く婚約を交わし、ティタンは正式にパルシファル辺境伯領の領主となった。


「こんなに幸せでいいのかしら……」

ティタンの肩に凭れながらミューズは呟いた。


「こんなきれいで可愛くて優しい婚約者が出来るなんて、俺は幸せだ」

手と手を重ね、自然と唇を重ねる。


「一緒に幸せになろうな」


「はい」

二人はとても仲睦まじく、幸せであった。


婚約パーティも終わり、二人揃ってパルシファル領へと戻る。


人の姿となったティタンを初めてみた、使用人達は驚いていた。


「お話は伺っていたのですが、ティタン様はとても体格が良いのですね」

小柄なミューズが並ぶと更に小さく見える。


「今までの事は全て覚えているよ。言葉も話せない獣姿の俺に、優しくしてくれた君達には感謝している。本当にありがとう」

見た目に反して穏やかな表情と声音に安心した。


元々のティタンを知っている使用人達も嬉しそうだ。


「元の姿に戻ることが出来た事、私達も嬉しく思います。改めて誠心誠意、お二人に尽くしていきたいと思いますので、よろしくお願いします」

ティタンが獣になった事情を聞いてもついてきてくれる者達に、ティタンは感謝をする。


「お前達もありがとな、この感謝は忘れない。これからはミューズと共に手を取り合って、より良い生活を送れるように頑張るつもりだ。皆信じてついてきてくれ」


「はい!」

ティタンの思いに応えるよう、明るく元気な返事が帰ってきた。








獣姿のティが居なくなって少々寂しい思いもあったが、ティタンは優しく働き者であった。


明確に仕えるべき主がいることで、屋敷内もパリッとした雰囲気となり、張りが出る。


見た目が変わっても中身は優しく、皆への気遣いを忘れない。


それどころか、会話が出来るようになったので、ミューズへ愛の言葉を表立って伝えることが多くなり、嬉しいやら恥ずかしいやら。


当のミューズも聞いている使用人達も頬を赤らめてしまう。


「今日もとても綺麗だ。そのドレスもよく似合っている」

絶えず褒められ、ミューズも照れてしまった。


過度なスキンシップもなく、清い交際が続いていく。


「式前に手を出しては駄目ですよ、絶対に嫌われるですからね」

とマオに釘を刺されている事を、ミューズはしらない。


「そんな事はしない。しないが、キスも駄目か?」

婚約直後にして以来、触れられていない。


あの柔らかな感触が忘れられないのだが、マオからの許可は下りない。


「駄目です。そこで止まらなくなったら困りますので」

ミューズからの信頼も厚い従者の言葉に逆らえる程、ティタンは理性は捨てられない。


「くぅ……」

ティの姿でなら触れられていたのにと、今の状況はかなり辛く感じていた。


あの可愛い手で撫でて貰いたいし、良い匂いのする髪に顔を埋めたい、でもそんな事を言って嫌われたくない。


ちょっとだけ獣姿に戻りたいティタンであった。








一緒に過ごす時間も増え、皆とかなり打ち解ける事が出来た。


ミューズも元々ティタンの事が好きなので、特に問題もなく過ごせている。


「どのような式にしよう」

日に日に近づいてくるその日が楽しみ過ぎて、ニヤケが止まらない。


名実ともに妻となるミューズはいつ見ても可愛らしい。


元々屋敷内での評判もいいし、慰問活動も進んで行なっているので、領主夫人としての働きに心配などもない。


ただ、式が近づくにつれ、少しだけ戸惑っているのも見て取れた。


(まさか、婚姻が嫌になったのか? 俺の事が嫌いに?!)

時々見せる憂いを帯びた表情にティタンは悩み始める。


普段鈍感なのに、変なところで妙に鋭い勘が働いた。


本人に聞くべきか、マオに聞くべきか。


悩んだ末に、ミューズに直接ため息の原因を聞こうと思った。


憶測ではなくはっきりと本人に聞かねば、これから夫婦として過ごすにあたり失礼だと思ったからだ。


変に気後れしてはならない。


「ミューズ、今夜少し話す時間はあるか?」


「大丈夫ですが、何の話でしょう?」

今ではなく夜にという改まった提案に小首を傾げる。


普通の話ではないと察したようだ。


そんな真剣に考える表情や一つ一つの仕草も可愛くて、ついニヤけてしまう。


「いや、ちょっと気になった事があってな」

ニヤける口元を抑え、真面目にしなくてはと表情を引き締めて真顔でそう言う。


その様子を見て、ミューズは更に心配そうだ。


こんなに真剣な顔になる程、真面目な話なのかと。


「分かりました、今夜お伺いしますわ」

夜に話すことを確約し、その後は平時の話へと戻る。


こうやってずっと見ていたい。


そんな事を思っているとティタンはお茶を飲むのも忘れてしまい、指摘されるまで放置してしまった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ