番外編:お願い④
猫の生態、不思議ですよね。
「猫を飼ったと聞いた。あの毛玉がそうか?」
手土産を持って、兄のエリックが遊びに来た。
青いシャツに黒のズボン。
至ってシンプルな格好だ。
「何だか怒ってるようだわ…大丈夫?」
その妻レナンが少し怯えてミルクを見る。
動きやすそうなワンピースに身を包んでいるが、上質な素材で出来てるのがわかる。
「多分俺のせいだ。昔から動物には好かれない」
ミルクがシャーシャーと怒っているのはエリックに対してのようだ。
一定の距離を保ち、毛も尻尾も逆立てている。
悲しむでも怒るわけでもなく、エリックは当たり前のようにそれに応じていた。
「触れたのはティが初めてだったが…やはり普通のは無理か。俺が退室すれば落ち着くだろうから、レナンはミューズに頼んでゆっくり触らせてもらってくれ」
「エリック様よろしいのですか?触りたかったのでは?」
レナンが申し訳無さそうに言う。
「あれに触ったらただではすまなそうだ、ティタン別室借りててもいいか?」
「でしたら俺も一緒に」
わざわざ来てくれた兄を一人にするわけにはいかない。
「執務室でもよろしいですか?兄上に聞きたい事がございまして」
「構わん、ニコラ行くぞ」
エリックに呼ばれ従者がついてくる。
「初めてあんなに怒るミルクを見ました、凄い迫力ですね」
ティタンはつい、ポロっと言ってしまう。
「それは俺に対する嫌みか?」
「そんな、まさか!」
慌てて否定をするが、エリックは仕方ない反応だと肩を竦めた。
「不思議と動物と会うと昔からあぁだ。獲って喰いなどはしないのにな」
ミルクには捕食者に見えるのだろう。
「呪いじゃないかと?」
エリックもさすがに首を傾げる。
「気になるところがあるということだな、話してみろ」
「あまりにも手が掛からないというか、話に聞いていたのと違うというか…」
いかに良い子なのかもティタンは説明していく。
「後でもう一度見てみるが…個体差があるだろうし。まぁあまり猫にヤキモチ妬くなよ」
兄にまでそんな言葉を言われると、凹む。
懐かない人には懐きませんよね。
不思議。
初めての子とはまずグーを作って匂いを嗅いでもらって、受け入れてもらえてから触ります。
目線合わせて少しずつ信頼関係作りします。




