助けて…。
週末、望優からメールがきた。
内容は、
急だけど、神社に一緒に行かない?
実は滝本君からメールがきて、お正月に初詣に一緒に行けなかったから、近くの、あの神社にみんなで合格祈願に行こうって誘われたらしい。
もちろん彩夏音も連れてきていいよって書いていたから、気分転換にどう?
だったので、私はOKの返事を返した。
一時間後に神社に集合することになった。
私はいろんな魔法の練習に夢中になっていたので、神社に着くのがギリギリになってしまった。
慌てて望優を探すと、望優の後ろ姿が見えた。
「望優ー。」
と呼んでも返事がない。
何かおかしい、様子が変。
私は望優に近づいた。
えっ!?
望優がなぜか眠っている。
どうして?
こんなに寒い時に…。
「望優、風邪をひくから起きて。こんな所で寝たらダメ。」
と私は大声で、必死で望優を起こそうとした。
それなのに全然起きない。
やっぱりおかしい。
どうしようかと焦っていると、
「ちょっと起こさないでくれる?」
と声が聞こえた。
目の前に、滝本君と乾君が現れた。
そして、平松さんも。
普段は眼鏡をかけて、おさげにしているのに、今日はかけずに、長いロングヘアーをおろしている。
いつもとは、まるで別人みたいに雰囲気が全然違う。
私は直感で、なぜか怖いと思った。
でも眠っている望優を置いてきぼりにして、ここから離れることなんて出来ない。
「望優はどうして眠っているの?」
と私は三人に聞いた。
すると、滝本君が、
「さぁ?」
と曖昧な返事をした。
乾君は暗い顔でうつむいている。
もしかして乾君は申し訳ないと思っているのかも。
それとも私がそう思っていてほしいと願っているから、そう見えるだけ?
でも、私は滝本君のいい加減な態度にさっきまでの恐怖心は消え、怒りが込み上げてきた。
「私の大切な友達に何をしたの?」
と出せる限りの大声で、睨みながら言った。
滝本君は、薄ら笑いを浮かべている。
この人、何?
こんな人だったの?
そう思っていると、滝本君が
「大人しくペンダントを渡してくれたら、この子にも君にも、痛い目にはあわせないよ。」
と言った。
何ですって?
滝本君がどうしてペンダントのことを知っているの?
「君、だいたいのことは知っているんだろう?」
私は絶句した。
私の表情で察知した滝本君は、
「なら、話は早い。」
と言い、手を差し出した。
「渡すわけないでしょう。
それに渡したくても、今はないでしょう。」
と私は答えた。
「透明化させているのはわかっている。
じゃあ行け。」
と滝本君は乾君に命令した。
何!?
乾君が私に近づいて来る。
私は震えながら、少しずつ後退りした。
それでも私に近づき、乾君は小さな声で、
「笹崎さん、ごめんね。怖がらせて。
君が何をどこまで知っているのかわからないけど、僕はBJJ という悪い組織のメンバーなんだ。」
ものすごくショックを受けた。
ハロからある程度は聞いていたけど、信じない気持ちと半々だったから、改めて乾君の口から真実を聞くと、立ち直れない位の衝撃だった。
私は言葉にならなかった。
「僕達の狙いは、本当にペンダントだけなんだ。
だから、渡してくれないかな?」
と怖がらせないように優しく言った。
きっとその優しさはペンダントのためなんでしょう?
私は心底悲しくなった。
泣きそうな顔をして、うつむいてると、乾君が、
「本当にごめんね。
僕は命令のまま、こうするしかないんだ。
滝本は、BJJ のボスの息子で、
次期トップの命令は絶対服従で…、
逆らえない。」
と乾君は悲しそうに話した。
そんな…。
知らなかった。
乾君も辛い思いをしてたの?
「笹崎さん、これを見て。」
「何これ?」
乾君の体には、見たことのない、爆弾のようなものが数本巻かれていた。
「ペンダントはとても硬い鉱石からできていて、どんな衝撃にも無傷なんだ。
だから外せないなら、これで笹崎さんを吹き飛ばして、ペンダントだけを奪うという魂胆なんだよ。
残酷なんだ…、滝本は。」
「そんなことをしたら乾君まで怪我をするかもしれないでしょう。」
「いいんだ、どうせ僕は捨て駒だから。」
「捨て駒?」
「利用されてるだけってこと。
僕には家族もいないし、家もない。帰るところがないんだ。
6年前、フラフラとお腹をすかせて、歩いているところをBJJ に拾われた。
最初はお腹いっぱい食べさせてくれて、とても親切だったから、どんなことも率先して手伝っていた。でも、段々と悪いことに加担させられるようになってきて、本当はすごく辛かった。
でも僕にはいく宛がないから、悪いことだとわかっていても、命令を全うするしかなかった。
ごめん、笹崎さん、僕はもうこれを最後の悪いことにしたい。
だから、逃げられるなら逃げてほしい。
笹崎さん、君に出会えて嬉しかったよ。」
私は涙が止まらなかった。
「絶対に嫌。
もっと命を大事にして。
乾君のことを想っている人もいるんだよ。
お願い。諦めないで。」
私は泣き崩れて、その場にしゃがみこんでしまった。
どうしたらいいの?
お父さん、ハロ、助けて…。