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ばーか

「んーと、よく考えてみたら栄一が正しかったというか」


 握手している俺の右手を包み込みように香月は左手を重ね、無理やり剥がした。


「もう良いじゃないですかぁ……わざわざ間違えを指摘しなくても、性格悪いですよ?」


 てっきり適当に褒めてきて誤魔化すのかと思ったが、口元へ左手を添えながら本当に恥ずかしそうな反応をする。

 本当に間違えたのか、それとも俺の思考も全て予想した上で踊らされているか。


「っあ、それよりも連絡先交換しません? 連絡先っ」


 どっちなんだ、と香月を睨みながら考えていると彼女は唐突にスマホを取り出す。

 そして顔へ持っていったかと思えば、左手を退けてニコッと微笑んできた。


「っえ、あぁ」


 連絡先交換、その言葉に心が躍り、反射的に頷いてしまう。


「あー、そうだな。頼む」


 しかし、それぐらいで何はしゃいでるんだ、そう思われるから初心者だと舐められないよう最低限の冷静を装った。

 例え、友達になってくれと頼んだ身でも人としてのプライドは残っている。


「ちょっと待ってくれ、今出す」


 ポケットをまさぐり、スマホを取り出す。

 しかし、わざわざ顔へ近づけたあの無駄な動き、自然と笑顔へ注目させるための媚びが癖になったのだろうか。

 そういえば……こいつ、嘘をつく時も笑顔を————俺は香月が微笑む前に、口元を隠していた左手へ視線を移す。


「んぅー、私の左手に何かついてますか?」


 不思議そうに顔を傾げ、純粋な笑顔で左手をヒラヒラさせる香月。

 それがまるで勝利の愉悦に浸っているような印象を与えてくる。

 くっそ! あの時に左手を剥がせば、判別できたのに証拠隠滅した後ではっ……。


「いや……なんでもない」


 まぁ、無理やり言わせる訳にも行かない以上、知ったところで意味がないっか。

 それに誤魔化すためとはいえ、友達の連絡先も貰える訳だしな、と俺はようやくLINEを開いた。


「……んっと」


 しかし、友達追加を探すのに予想以上に手間取ってしまう。


「もうー、貸してください」


 すると痺れを切らしたのか香月にスマホを奪い取られ、勝手に操作される。


「あー……頼む」


 まぁ、見られて困るものは履歴ぐらいだし

、問題はないけど……それにしてもこんなズカズカとプライベートや距離を取らずに踏み込んでくる奴だっけ。

 もしかして——世間一般的な友達間の自由さ、気安さという物を体験させる為にわざと図々しく……?


「終わりましたよ、じゃ昼休みも終わりそうなんで私は行きますね」


 睨みつけるようにスマホを下上方向へ素早く複数回スライドさせた後、香月はすぐに返してくれる。


「あ、ありがとう、早いな」

「まぁ、誰かと違って慣れてますからね」


 俺の胸部をとんとんと指でノックし、続けざまにウィンク。

 そして少し間を開けると、打って変わって彼女は真面目な表情をした。


「あの……今後は面倒事も起きるでしょうし、責任も感じるので相談や気晴らしぐらいは乗りますよ。友達ですし」

「ありがとう、そうさせてもらうよ」


 本気かは別として相談することは多分ないだろう、そう思いながらもとりあえず肯定する。

 すると、香月は背後で手を組みながら疑わしそうに目を細め、スマホへ通知が届く。


『ばーか』


 そこには香月の自撮りアイコンと共に短い暴言が書かれていた。

 っは? なぜ急に罵られたんだ?

 顔を上げて真意を聞こうとするも、もう逃げるように出て行った後で目の前には誰もいなかった。


「んーー? やっぱり結果に不満があって怒っていたのか?」


 衣服が擦れる音すら大きく聞こえるほど静寂に包まれた図書室で呟き。

 そして本人へ確認するべく、具体的にどこか馬鹿なのか教えてもらおうと長めのメッセージを送り————既読無視された。

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