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片桐 時雨は面硬い(猫かぶり)

「ぼっちと君はどっちに付く? 好きな方で良いよ」


 そう兄弟と共に片桐に指さされた俺は迷う、片方は小学生の頃に振られて気まずい奴、片方はいつ機嫌悪くなるか分からないヤバい奴。


「じゃ、じゃこいつが良いんだけど」


 僅かな望みをかけて片桐の横にいた兄弟を指さすと彼が「は? 野郎と組んで何が楽しいんだ、邪魔をするな」とでも言うような目を返してくる。

 それもそうか、彼は自分がカースト上位と仲良くなれるかもしれない夢を見ているのだから。寝起きの機嫌が悪くなるように誰だって夢からは覚めたくないものだ。


「っはは、ぼっち。私と、雪の、どっちを選ぶのって聞いているんだけど」


 まるで出来の悪い子供を諭す母親のような優しく話しかけてくる片桐……だってどっちを選んでも地獄じゃないですか。


「どっちでもいいんっしょ、その子私無理だしぼっちくん貰うね」


 そう言うと真ん中に立っていた俺を口悪友が自分の方に引っ張る。


「ふーーん、おっけ。君、私たちが雪をコテンパンにして勝ったら何かご褒美あげるから頑張ろっ」


 片桐の口からご褒美と聞いて一気に真面目な表情に変わりやる気に満ち溢れた兄弟を口悪友が蔑むような目線を送る。


「何、餌で釣り始めるなんて片桐やけにやる気じゃん。じゃぼっちくん、ウチらが勝ったら服とかコスメ今度一緒に行って選んであげる」


 っえ、いや、餌じゃなくて毒餌、想像するだけで吐き気がしてくるんですけど。進めてきた物が気に入らなかったら不機嫌になりそうじゃないですか。手を抜かなきゃ不味いな。


「一応言っておくけど、行きたくないから手ぇ抜いたら許さないから」


 思考を読んだかのように振り返って忠告してくる口悪友。


「褒美じゃない自覚があるならお金とk――」

「じゃついでにお昼奢るよ。それならいいんっしょ」


 ご飯、マジで? それなら機嫌を伺えばいいだけなのだから悪くないかも。

 露骨に顔色を変えたからか口悪友が口をピクピクさせながら静かに俺の腕を力強く抓ってくるが、今ではそれすら小さい問題としか思えなくなってきた。

 そういえば口悪友って内心呼んでたけど、この女神様の苗字を俺は知らないなと思い体操服の胸元を注目すると『雪宮 蒼』と書かれていた。


「へぇ、雪こそやる気じゃん、陰キャとか嫌いじゃなかったの? それデートじゃない?」

「片桐が何にマジになってんのか分からないけど、ウチだって勝つためなら我慢するし」


 バチバチに笑顔で睨み合う二人とやる気に満ち溢れている兄弟を横目に俺は何を食べようかなと楽しみにするが、直後浮かれて忘れかけていたが自分の足が悪いことを思い出す。


「まぁ……怒られない程度に頑張れば大丈夫か」


 パッと動かすと電撃が走ったような痛みが流れる足に俺は勝利を捨てた。





「やったぁぁああああ! 僕の勝ちだぁぁぁぁぁッ!!」


 結果は言うまでもなかった。

 前半は何とか互角な試合をしていたが、反応出来ない範囲を知るや否や集中的に兄弟は俺だけを狙って左右に揺さぶり完璧に敗北した。

 流石だよ兄弟、勝つためなら手段を選ばないとは男の中の男だ。

 

「…………はぁ、まじ最悪。ぜんっぜんっ楽しくない」


 雪宮が機嫌悪そうに俺を罵倒する。そりゃそうだ、役に立つどころか敗北の原因は全て俺にあるようなものだから。彼女からしてみたら悔しくて仕方がないだろう。


「っはは……やるじゃん、君」


 勝ったというのになぜかあまり嬉しそうじゃない片桐がぎこちなく手を挙げると兄弟が嬉しそうに合わせ、彼の名札が見えた『柄山 良太』なるほど、覚えておこう。


 でもとりあえず彼らのことはおいといて機嫌が悪い雪宮をどうにかしなければ後が恐ろしい、俺が近づくと何か用、とでも言いたげな表情を雪宮がしてくるので頭を下げる。


「……ぼっちくん何してん?」

「いや、その悪かった。足を引っ張ってしまって」

「は? 別にあんたが謝ることじゃないっしょ、良くやったよ」


 何謝ってるの、予想外の言葉に顔をあげると雪宮は俺ではなくもっと奥にいた嬉しそうにしている柄山を睨みつけてた。

 俺にイライラしていた訳じゃないのか、確かに個人的には嫌いじゃないがあの手段は客観的に見てもゲスの極みで良い印象は与えないかもしれない。

 それに恐らく彼女らは楽しく真剣勝負がしたいのであって、勝負にならない勝負をしたいわけじゃなかったのだろう。

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― 新着の感想 ―
[一言] 物語と関係ないけど走るの無理でテニスしてたら、普通に走れって言われると思う。 テニスって普通に走るより負荷ハンパない。
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