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偽善と悪の神は笑う男

 流石に傍観している訳にも行かないので、俺は図書室へ静かに入る。

 しかし、いざ介入しようとする寸前で神宮寺がウィンクしてきていることに気づく。


 よくドラマとかで以心伝心のように伝わるシーンがあるけど、馬鹿にしているのか、それとも考えがあるのか……全く分からない。

 考えろ、俺が神宮寺なら何の意味でウィンクするんだ。

 

 少しの硬直の後、自然を装いながら通知があったようにスマホを取り出し、図書室の端で身を潜めた。

 俺が彼ならイジメという汚点がある二人のために片桐や雪宮、堅山の好感度を下げるなんて合理的じゃないことは絶対にしない。


「ね、大丈夫だったでしょ。九条さん」

「っえ、う、うん」


 神宮寺は席を立った九条と呼んだポニーテールの子を落ち着かせる。

 そして彼女も人混みがその内解消されるなら、やらなくていい作業はしないのか、戸惑いながら座り始める。


「しかし、困っている人を見つけて動かずにいられないなんて、二人がそんなに優しいとは思わなかったな」

「い、いや、ちょっと可哀想で見てられなくて……動くのが当たり前かなって、ねぇ?」


 まさか、サボっていること隠そうとして棚からぼたもちで褒められるとは、二人も想像できなかったようで恥ずかしそうに微笑を浮かべる。


 神宮寺に自己投影した上で信じた。

 しかし、それに反して三人は着々と仲良くなっていく。

 サボっていることがバレ、神宮寺もろとも周囲が二人を責める流れにする目的を忘れてないなら、その前にわざわざ褒めて仲良くなる意味なんて無い。

 そう考えながら対応を間違えたか、そう後悔を始めていた時だった。


「あのっ! 後の二人は神宮寺と話してるので……待ってても来ないです」


 普段から声を発することに慣れてない、そう思われる何処かから聞こえた細い声。

 それによって落ち着きを取り戻していた群衆が一斉に眉をしかめて神宮寺たちへ視線を向けた。

 なるほど……嘘や誤報によって普段図書室を使わない生徒は抑えられる。

 だけどつり合いをとるように、イラつきは全てを知っている図書室を使う少数へと流れ込む。

 代わりに怒ってくれ、ストレスが解消してくれる代弁者を失った彼らは当然——か細くなった火に少しの薪を入れる。


「ハァー? トイレじゃねぇじゃんッ!!」


 先程まで何とかなるかも知れない、そう思っていた二人は突然として180度変わってしまった状況が未だ掴めないようで固まってしまう。


「しかもこんなになってんのに、まだサボろうとして座ってたし、さっき笑ってたよなッ?!」


 ここぞとばかりに列へ並んでた堅山が叩きつけようと、火に酸素を送り込み続ける。


「ち、ちが、ちがくて」

「何が違うんだし、さっき笑ってたのウチも見てたよ」


 何を思ってサボっていたのか、笑っていたのか。

 そんな本人しか分からない真実は置いてかれ、客観的に見て間違いの無い『笑っていた』という事実のみを今だとばかりに雪宮も突く。


「っう……いや、そのー」


 気まずそうに俯きながら、九条たちは神宮寺へ救いを求めるかのように視線を向けた。


「優しいと思っていたのに……まさか二人ともサボっていたなんて」


 助けるのか否か、もはや状況的に考える必要も心配する必要もない。

 まるで初めてここで知ったかのように神宮寺は失望と驚きの表情を浮べ、拒絶の反応を見せた。

 先程まで信用や友情にも似たシンパシーを得ていたのに、平然と突き放す神宮寺。

 それによって二人は捨てられた子犬かのように顔を固まらせる。


 そして同時に彼が何のため仲良くなったのか、俺は分かった気がした。

 より落差があった方が人は人を嫌う、その為に彼はわざわざ関係性という山の上へ登らせ——突き落とした。

 もちろん、彼女らが香月を目の敵にするほど恋している分を考慮するとそんな必要は全く無い。


 批判する人混みに紛れ込み、一瞬だけ愉悦を感じさせるほど口角を上げ、華麗な笑顔を零した神宮寺——これは完全に彼の自己満足と趣味によるものだ。

 

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