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孤高のライオンはファッション文系


「ちょっとっ、それじゃ私がまるで嫌われているみたいじゃないですか。小動物じゃないんですから戻ってきてください」


 第三者で見る分には好きなんだが、会話したくないタイプ。動物園のライオンのような檻の向こうで楽しむ生き物って言えば分かりやすいか。

 図書室のドアから香月様が早く戻ってこい、とばかりに眉をピクピクさせながら笑顔で手招きしてくる。


「お前図書部なのか?」


 仕方ないので、戻りながら一応確認してみる。まだ人手不足で呼んだ一時的な助っ人の可能性も十分にあるし。


「もちですよ、じゃなかったら何のためにこんなつまらないところにいると思ってるんですか?」


 そのつまらない場所に拘束される部活になんでわざわざ入っているんですかね……。


「先輩に媚びたいならマネージャーとかしたほうがいいんじゃないのか?」


 当然湧き出る疑問を投げかけると香月様は「はぁー」というため息と共に分かってないな、というように指を立ててきた。


「いいですか? マネージャーから貰って当たり前の飲み物を貰うのと、別の部活に入っている子がわざわざ早起きして飲み物をくれる。どっちが有難くて、印象に残ります?」


 そりゃ確かに後者の方が色々と男の子は思考を巡らせるかもしれない、香月様のやろうとしていることは理解できた。しかし、

 

「なんで図書部なんだ? 茶道とか美術とか他にもあっただろ」

「茶道はお菓子食べれますけど1時間も2時間と馬鹿みたいに座ってマナーが面倒ですし、美術も絵を描くのが面倒じゃないですか」


 後は分かるよね、という顔。図書部は図書室の貸し出しを行うだけでスマホは使えるし、やる事やってれば怒られないからか。


「それに、実は図書室にいる間は静かで本が好きでしたっていうのもギャップ萌えって奴じゃないですか」

「本が好きだったのか?」


 見かけによらないものだな、と聞き返すとそんな訳ないでしょ的な目を返された。お前のその口から出た言葉だぞ。

 だけど、彼女がここにいる目的は完全に理解出来た。朝練に顔出すけど本当は暇ではないという理由のために一番緩そうな部活に入り、ついでにファッション文系を手に入れる。

 想像の数倍遠回りのような気がしなくもないが、彼女の標的には尽くしてくれる優しい女の子という印象は与えられているのだろう。


「すんません、本を借りたいんですけど」

「っあ、すぐ行きます!」


 カウンターに人が来ると香月様は慌てたように戻ってその生徒の貸し出しカードと本のバーコードを備え付けの機械で読み込ませる。

 香月が退いたので俺の中に入るとまず第一に感じたのは木を感じさせる香り、きっと判明してないだけで森林浴と近しいリラックス効果的もあると思う。

 中は想像通り、いや想像以上に巨大本棚と無数のテーブルが並んだ天国だった。


「すみません、ありがとうございます」

「いえいえー」


 カウンターの機械も二つあるし、この広さの図書室ならば二人か三人ぐらいの部員はいるだろうと思った俺はもっと話しやすそうな他の部員を探す。


「さっきから何してるんですか?」

「あぁ、いや、香月様以外の図書部員を見ておこうかと思って」


 俺が初めて様付けで呼ぶと先程本を借りた人物が様付けに反応して振り返り、図書室にいた数人も視線を向けてきた。

 みんな中々いい耳をしているじゃないか。


「保知さん、女の子を様付けする癖はやめた方が良いって前も言ったじゃないですかぁ〜、まだ治ってないんですか?」

「いや、おまぇに——ィッ」


 言い訳して逃げようとする香月をさらに追い込もうとしたら足を思いっきり踏まれた。


「っあ、ごめんなさい。大丈夫ですか?」


 まるでわざとじゃないように踏んだ箇所を手で優しくさするフリをし、さらにぐりぐりと押し込みながら心配そうに香月が声をかけてくる。

 雪宮といい、カースト上位の奴らはすぐに手を出してくるな。それとも俺の周りだけ、たまたまそんな人間が集まってくるのか?


「分かった、分かったもう言わない」


 余計な手間を取らせやがって、とでも言いそうに最後のおまけとばかりに追加で1発足を殴った香月はそのまま立ち上がる。

 こいつ……よく会って数日の人間相手にそこまで出来るな。いつか誰かにボコボコにされるんじゃないかと心配になって来るレベル。

 

「それでお前以外の図書部員と話したいんだけど、どこにいるんだ?」


 それまで笑顔を保ってたはずの香月が「いやぁ」と静かに呟きながらばつの悪そうに少し足元を見る、特別何かおかしいことを言った訳ではないはずだが?


「そのぉ……今日は私だけしかいないんですよ」

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