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図書室にいるあいつ

「部活、ですか?」

「お、片桐と雪宮か。あんま保知をいじめるなよ、お前ら」


 担任はゆっくりと俺の机に来て「そんなことしないですよ」と答える片桐を疑わしそうな眼差しで見ながら一枚の紙を手渡してくる。


「その足で体育系は厳しいかもしれないが、文化系なら問題ないだろ。やってみたい奴あるか?」


 目を通すと流石都会の学校で文化系の項目だけでも結構な種類があり茶道、吹奏楽、美術部などのさまざまな部活があった。


「うーん、興味ありそうなのはなさそ……ん、図書部?」


 図書委員会とかではなく部活になってるのか、この学校は。


「あぁ、図書室で本の貸し借りやったり整理したりだな。あとやってることといえばボランティアで近くの病院の子供に読み聞かせに行ったりとか、か」


 病院……ってことはもしかして立地的に一番近い俺が入院していた所とか? 

 ということは、ここに入ればまたあの子供たちに会える口実が出来るかもしれないのか、それは少し楽しそうだな。まぁもちろん、退院していて会えなかったが一番良いが。


「そこに入ろうかな」

「っあ、それなら先生私も入ります」


 俺の声にかぶさるように片桐も先生から紙をもう一枚ひったくって入部届を書き始める。

 部活にまでついてくる気か、いくら何でもそれは仲を直そうって執着が強すぎないか?


「お前……少し前まで興味ないって言ってたのに。――っぁぁ、これが青春って奴か」


 担任がなるほどな、と俺を見てくるが多分その想像よりこの青春は青い春どころか腐っている秋、腐秋ぐらいだと思いますよ。


「なら、雪宮はどうするんだ。片桐が入るならやっぱり入るのか?」

「うーん、ウチはパス。時間にそんな余裕ないし」


 当然、俺もついてくるかもしれないと警戒したが雪宮は予想外にも否定した。

 その理由に担任と片桐も少し思い当たる節があるように頷いて納得する、もう高校生だしアルバイトとかしているのだろうか。


「ま、じゃ顧問には俺から伝えておくから保知は行ったことないだろうし昼休みに図書室へでも行って作業を見てきたらどうだ?」


 それだけ伝え、書き終わった俺と片桐の紙を取っていくと「じゃ、もう用はないから戻るぞ」と担任は教室を出ていく。


「片桐さん、いくら何でも部活まで一緒にしなくても」

「ダメ……? それなら先生に言ってくるけど」


 上目遣いでしょんぼりしたように小声で返してくる。そこまで仲直りしようとすると努力は嫌いではないんだけど、


「ちなみに理由を聞かれたらどう答えるんだ?」

「保知が私のこと嫌いだからやっぱりやめるって」


 どう、これなら断れないでしょとばかりに打って変わって片桐は笑顔で言い放つ……この武器が有ったら徹底的に使う性格だよな。


「別にそこまでって訳じゃないから……構わない」


 少し前なら言わなかったセリフだろうな、と口にしながら俺は考えていた。だって絶対に告白したことをあっちこっちに言いふらしていたのだから。

 




 昼休み、手軽に作ったサンドイッチを食べ終えた俺は図書室へと向かっていた。

 ちなみに、片桐たちは他の奴らに誘われて学食へと向かった。食べ終わるタイミングがズレると見られている方も見ている方も気まずいだろうによく一緒に食べようとする、俺なら絶対嫌だ。そもそも誘われることなんてないが。

 しかし、図書部か。やっぱり本が好きな人とか沢山いるんだろうな、おすすめな本を教え合ったりするのかな。

 あぁ、楽しみになってきた。この学校の図書室は結構大きい噂も相まって心躍っていることを外から悟られないように隠すのが大変だ。


「――っぇ」


 だが、その気分も一瞬で消えた。

 なんせ図書室のドアを開けて一番最初に見えた人物に見覚えがあったから。


「っぁ……ちょっとぉ保知さんじゃないですかぁ~私にわざわざ会いに来たんですか? 少しだけ気色悪いですけど嬉しいですよぉっ」

 

 やる気が無さそうにカウンターで顔を伏せながらスマホを弄っていたが、こちらに気づくや否や周囲に人がいることを確認してから必死に嬉しそうな表情を香月様は浮かべてきた。

 だから俺は静かに扉を閉め、身体の向きを180度変えて職員室から入部届を奪還することにした。

 朝早くに先輩へ飲み物とか言ってただろ、体育系のマネージャーとかやっているんじゃなかったのかよ……あいつ。

 

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