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箱庭のような星。創造主さまが勝手に創り出し、そして何もかも中途半端な世界は、行き場を求める魂をいつでも大歓迎!
連絡方法はとても簡単。ただ行きたいと願うだけ。たったそれだけで、貴方は楽園の開拓者!
え? 楽園じゃなくて中途半端に放り出された世界?
どちらも変わりないでしょう? 開拓者が輝く先なんて、所詮は出来損ないのうち捨てられた星なのだから。
さぁ、今日も一人、また彷徨える魂を捕獲しました。
いやー、毎日毎日大漁ですねーー………………。
あれ?
いや、それは違いますよ? か、神さま!?
「…………………」
酷い頭痛。
まるで覚めかけた意識も遠のくほどに。
しばらく激痛に耐えて、ようやく目を開いた。
すると目の前には知らない人がいて、早口で何かをしゃべっていた。私に? 男? ヒゲ!? ブツブツ! ツバが飛んで来そう!?
あ、あの、ち、近いっ!!
「うわっ!!!」
次の瞬間、知らない人はぽかんと口を開けたマヌケな表情のままで斜め後ろに離れて行き、やがて通りの反対側で尻餅をついた。
まるでマジックショーでも見るように、不思議な軌道で離れて行く様子を、ぼんやり眺めている私。
えーと。
これはいったい、どんな悪夢?
悪夢…にしては、妙にリアルな風に吹きさらされているのだけれど。
呆然としている私の前に、よろよろと立ち上がったさっきの人が戻って来る。とりあえず、やっぱり男。見ず知らずの誰か。無精ヒゲが目立つ…、オッサン?
「な、何しやがる! ただの人形のくせに!?」
「え?」
「ふざけるな! この役立たず!」
さっきの人は大声でわめき立てて、そのまま去って行った。エコーが響くように、見事な捨てゼリフを残して。
………。
言葉が通じた。
役立たず? 人形? そりゃ、私は役立たずだけど、知らない人にそんなことを叫ばれるいわれは……と、違和感。
え? 私は………、誰?
(誰?)
「えっ?」
今度は頭の中に響く声。
(名前は?)
「………マツノ、ユウコです」
(へぇ)
思わず答えてしまった。
………。
無言?
というか、どこから聞こえてるの?
(奥の部屋へ。そこで話しましょう)
「え、ええ…」
奥…と振り返ると、そこに扉がある。そこで初めて、今いる場所を確認した。
木造のログハウスみたいな壁、土間にいくつか長椅子があって、壁には書棚が二つ。そして―――――な、何!?
ぺったんこの靴を履く自分の脚が見えた。
長!
高校卒業から履いた記憶のないぺったんこでも、モデルが逃げ出すような脚。何? どうなってるの?
(まだ?)
「あ、え、は、はい」
動揺しながら扉に向かうと、その長い脚が交互に動いた。つまり、これは自分の脚? どういう冗談? やっぱり酷い悪夢だ。
地球人類松野祐子は、この日、どこかで何者かになった。
記念すべき記憶が、無精ヒゲから始まっていたことを知る者はいな……かったら良かったが、程なく周知の事実となるだろう。
当たり前だ。無精ヒゲのオッサン本人という、どうしようもない目撃者がいるのだから。
※習作です。一応、一万字ぐらいは書いていますが。