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外伝5

後輩3人を守る為、金を払うことを約束した。仕事ではマイカワの厳しい教育が続いた。しかし

俺の心は折れることはなかった。マイカワが俺をボーイ長への昇格を推してくれたのだった。


次長から社長に代わり、辞令の発令があった。

「キング店、マイカワ!」

「はい!」

「これからは店舗長としてキングを頼むぞ。キング店支配人を命ずる」

従業員からどよめきが起こる。

「マイカワさん、また2段階昇進だぞ」

「すげえな」

マイカワは入社して、メンバーからボーイ長を飛び越して主任になり、主任長を飛び越して、

支配人となった。しかもキング店の店長、支配人が抜け、店のトップになったのだった。これで

キングのトップが支配人マイカワ ボーイ長近藤、ボーイ長イシハラ、ボーイヨシタカの4人に

数人のアルバイトと、フロントに次長が入る体制となった。


4店舗のエース店の説明があり、ミーティングが終了した。各店に従業員が散らばっていく。


「支配人、これから大変ですね」

「何だイシハラ。ビビってんのか?これからが本番だろうが」

「ビビってなんかないっす」

「俺達の歴史の1ページ目だ。気張れよ!」

「うっす!」

マイカワは『俺達の』と言った。小さいことだが、俺はこれに鼓舞され奮起した。


このマイカワの一言は、伝説となる営業の序章に過ぎなかった。


マイカワは思い切った改革を行う。店のシステム料金から女の子の給料システムまで一新すると

いうのだ。普通の一店舗長がここまでの権限はないはずだ。

「イシハラ、俺の草案が通った。来月までに完全にして営業に反映させるぞ」

「はい!」

この2つのシステム変更は、計算し尽くされた計画だった。客は好みの女の子を自由に選べる。

サービスTAX料が付加するのが主流な業界にとって、1万ポッキリという明朗会計とした。女の

子の時給も変動性とし、地域でトップクラスの時給を稼げると評判になった。全ての数値が

アップするという、とてつもない計画だった。マイカワは女の子の教育に力を入れ、営業力の

強化に努めた。


イメージとは裏腹に店の売上は、低迷することとなった。


俺は支配人とコダマ、キムラと3人がよく集まるショットバーに来ていた。3人はいつも仕事の

話をしていた。4店舗目のエースの売上がかなりの刺激となっているようだった。

「キングはヤバイな」

多々ある問題をマイカワは話した。

「改革は痛みを伴うんだってば」

「浸透するまでに時間掛かるのはしょうがないだろ?」

3人は店休日に息抜きで他店に遊びに行くと話していた。俺はもちろんそれには同行しない。

ヨシアキくんへ金を持って行かなければならなかったからだ。その店休日にマイカワは、運命の

出逢いをしていたことを後で知る。ユイさんとの出逢いだ。


支配人の意識が変わり、店は好調な売上へと推移していく。彼の少しの変化で店全体が変わる。

影響力がある証拠だ。これでキングは、一気に地域でナンバーワンとの噂になった。


好転しかけた店に、俺の個人的なトラブルが発生してしまう。

「ボーイ長、お客さんがフロントで呼んでるぞ」

誰だろう。次長が俺を呼びに来た。

「よう!イシハラ、金もらいに来たぜ」

「ヨシアキくん!まだ25日じゃないじゃないですか」

「ちょっと飲みに行く金が無くてよ」

「イシハラ!何やってんだ、戻って来い!」

支配人が俺を呼び戻そうとした。

「すいませんね。ちょっと話があるもんで」

「ちょっと人手が足らないもんで、手短にお願いしたいんですが」

店内に戻ると、特に人手が足らなかった訳ではなかった。支配人は、何かを察したのだろう。

機転を利かせ、俺を呼び戻してくれたのだった。


その日の営業終了後、支配人にショットバーに呼び出された。

「正直に言え。あいつは借金取りか?」

俺はヨシアキくんとの経緯を話した。俺達が我慢の限度を超え、暴行を働いたことや後輩が金を

盗ったことも隠さずに全て話した。

「謂れのねえ銭なのか」

「俺はそう思ってます。でもそうでもしないと後輩がヤキ入れられるんじゃないかって…」

「後輩を助ける為か?」

「意地もありました。こんな奴とは金払って縁を切りたいって」

「そうか。あの野郎のことだ。また必ず来る。俺が間に入ってやる」

「え?」

「金に関しては、ちゃんとお前が筋を通せ。しかしそれ以上は金輪際、関わるなと言ってやる」

「やばい先輩なんですよ」

「だからどうした。お前が後輩を守るのと俺がしようとしていることは、同じじゃないのか」

マイカワは俺の行動を立ててくれた。この人はこれほど、俺のことを信用していてくれたのだ。


「基本給の全て、20万ずつ返せ。生活は大入りで暮らせ」

「はい」

「鬱陶しい顔を見るのは5回だけで十分だろう。お前が頑張って売上を出せば大入りも増える」

「はい!頑張ります」

胸の奥にあったモヤモヤが全て吹き飛んだ。俺はこの人について行こうと強く思った。支配人は

本当に俺の心の内が読めるような気がした。


店は好調を維持するどころか、過去最高の売上を連日のように叩き出していた。週末に入る

大入りも他店の主任以上のギャラを得ていた。支配人の言うとおり、俺は20万を返済した。

「何だ、ずいぶん儲かってるんだな」

「手元に5万しか残ってませんよ」

「まあいいや。じゃ来月も頼むぞ」

札束を数える後姿を蹴飛ばしてやりたかった。しかし支配人の言うとおり、あと4回だ。


ヨシアキくんは支配人の言うとおり、小遣いが無くなると店に来た。

「イシハラは業務中です。何か?」

「俺はあいつに金を貸してるんですよ」

「貸している?私に報告している内容と異なりますね。それは毎月25日が返済日だと」

「ちょっと入用で金が必要なんですよ」

「奴は奴なりに筋を通している。お帰り頂けますか?」

「また来ますよ」

「営業妨害として訴えを出しましょうか?」

「何だと!」

「私が約束します。イシハラにあと4ヶ月であなたにケジメをつけさせます」

「もし約束を破ったら?」

「あいつは俺の部下だ。もうあなたの後輩ではない。私がケツ持ちしますよ」

「支配人が言うなら信用しますよ。でもあいつはウソは付くし、手癖も悪いですからね」

「周囲に居た人間が宜しくなかったのでは?」

「それじゃ…」


支配人は約束どおり、俺を守ってくれた。その後、ヨシアキくんは店に来ることはなかった。


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