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外伝2

何とか仕事に就くことが出来た俺達は、起きれないと判断するとシンナーを吸っていた。


「イシハラくん!やばいっす!」

「何だよ?」

「もう5時前です!」

「みんな寝ちゃったのかよ!」

俺達は大急ぎでヨシアキくんの家に向かった。5時を10分くらい回ったところだろうか。

「すいません!寝坊しちゃ…」

ガツンという衝撃がこめかみ辺りに走った。次の瞬間、頬にアスファルトが触れていた。大島が

目の前で倒れたのが見えると、次々に原田、大橋もヨシアキくんにぶっ飛ばされた。

「今後、一切遅刻はするな!」

「すいません…」

俺達は、ワンボックスの車に乗せられると現場まで向かった。現場では地獄だった。シンナーの

吸い過ぎで体力が落ちているのに、この寝不足。ちょっとでも手を抜けば、ぶっ飛ばされる。

大島は、体調が悪くなり嘔吐していた。

「大島!吐いたら仕事戻れよ!」

「はい…」


昼の休憩時間、俺達はヨシアキくんと現場近所の食堂に入った。

「好きなの頼めよ」

「俺、車の中で寝てていいっすか?」

「好きにしろ」

大島は食堂を出て行った。俺達も正直、食欲など無い。朝方までシンナーを吸っていたからだ。


何とかざるそば1人前を食べた。ヨシアキくんは休憩所で昼寝すると言い、俺達は車で話した。

「大島、大丈夫か?」

「気持ち悪いっすね」

「よう、逃げちゃおうか?」

「やってらんないっすよね!」

「やべ!こっち来ました」


俺達は夕方までみっちり、ヨシアキくんに使われた。18時頃、事務所に帰ってきた。

「お前ら、しばらくは日払いの方がいいんだろ?」

「はい」

あれだけこき使われて、たった7000万。同じ動きをしていた大橋、原田、大島は6000円だった。

「明日も同じ現場だから、寝坊すんなよ!」

「はい」


「俺、続けていける自信が無いっす…」

「俺だってそうだよ」

「バックレると探されて、ぶっ飛ばされるんだろうな」

「憂鬱っすね」

俺達は、我慢し続けて仕事に行った。確かにシンナーを吸って、バイクばかり乗っていた。

鈍った体でいきなり肉体労働をしたのだ。ヨシアキくんが怖いということもあって、疲れた。


4ヶ月ほど休まず、ちゃんと仕事に出た。何回かは集会の翌日、行ってはいない学校をネタに

休んだことはあった。ある日、俺達はいきなり呼び出された。

「お前ら、そろそろ払ってくんねえかな?」

「え?何をですか?」

「作業服代、ヘルメット、安全帯、工具代だよ」

「いくらっすか?」

「1人5万だ」

「高くないっすか?」

「カス同然のお前らを使ってやってんだ。仕事続けるなら必要なんだ。これくらい払えよ」

無性に腹が立った。カスとは何だ。しかも使ってやってるって。自分が人手が足りないからと

俺達を呼び出したんじゃなかったのか。


「俺、ちょっとヨシアキくんの下では、やっていけないです。辞めさせてください」

「大橋、何だコラ!面倒見てやってんのに!」

大橋は案の定、ヨシアキくんに殴られた。

「だってヨシアキくんが人手足りないって言ったじゃないすか!」

「口答えすんじゃねえ!」

「理不尽過ぎませんか…?大橋が可哀相っすよ」

大橋を殴っていた手が止まり、ヨシアキくんは俺の方を振り返った。

「何だイシハラまで?あんコラ!」

「今日びのガキだって、もうちょっと稼ぎますよ」

ヨシアキくんが俺の方へ近寄ってくる。


「あああ!」

原田が後ろから、灰皿でヨシアキの後頭部を殴りつけた。俺達は、一斉にヨシアキくんに殴り

かかった。俺達は一心不乱にヨシアキくんを殴った。

「死んだんじゃねえか…」

「この人は、こんなくらいじゃ死なないっすよ」

「逃げるべよ」

俺達はその場から逃げた。


「イシハラくん、これでパッと行きましょうよ」

「原田、どしたのそれ?」

原田の手には万札が10数枚、握られていた。

「お前まさか…」

「ヨシアキくんの財布からっす」

「さすがにマズいだろ…」

「風呂入って、キャバクラでも行きましょうよ」

「散々やられた、殴られ賃と今までピンハネされた分ってことでいいじゃないですか」


俺達はその夜、原田のお勧めのキャバクラに行った。

「いらっしゃいませ!何名様でしょう?」

「4人だけど、待つの?」

「少々、お時間を頂戴致しますので、こちらでお待ち頂ければ」

ヒゲ面で腰の低い男がドアを開けると10数人、すでに待っていた。

「こちらでお待ち頂く分は、無料で飲み放題となっておりますので」

「イシハラくん、待ちましょうよ」

「お前のお勧めなら、待つとするか」

意外と長時間ではなく、1時間も待たずに店内に入った。店内はすごい活気があり、客が満員

だった。女の子のコスチュームはバニーガールだった。

「面白そうな店だな」

「でしょ?」


「いらっしゃいませ!お客様、ご指名はございますか?」

「特に無いよ。可愛いのとキレイどころ付けてよ」

「かしこまりました。すぐに女の子を呼びますので、そこから時間をスタートさせますね」


『マイカワ主任リストまで』


店員の声が店内に響いた。すると俺達の目の前に居た男が手を上げた。

「それでは、少々お待ちください」


「おい、今のが主任だってよ」

「イシハラくんとかと同じくらいじゃないっすか?」

「かもな」

その男は、背がスラっと高く、身なりや髪型、俺達に接する態度がカッコ良く見えた。


「いらっしゃいませ!カズミです、よろしくね」

男が言ったとおり、すぐに女の子達が来た。

「なあ、あの男って何者?」

「マイカワ主任?あの子、まだ18で入店1ヶ月で主任になったのよ」

「それってすごいの?」

「うちのグループって3店舗あるのね。その中でも若手ではダントツなのよ」

男子スタッフは、グループで社員が20人ほど居るらしく、アルバイトを含めると30人ほど居ると

いう話しだった。マイカワ主任という男は、入店1ヶ月で飛び級で昇進し、5人ほど先に入社して

いた先輩連中を抜いたとのことだった。


「同い年か…」

「お兄さん、主任と同い年なんだ?主任ー!」

「お、おい!」

「カズミさん、何でしょう?」

「お客さんがね、主任と同い年なんだって」

「タメってやつですね。今後ともよろしくどうぞ」

「は、はあ…」

「どうされました?何か嫌なことでもあったかのような顔してますね」

「え?」

「追われているような、怯えているような感じました。今日は忘れるくらい楽しんでください」


何だ、この男は。さっき、一言話しただけなのに。俺の心でも読んだとでもいうのだろうか。



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