第十五週:駆け落ちと求婚者(火曜日)
「まさか、王子自らお越し頂けるとは――」と、玉座の間の入り口に立ち一行を迎えながらエルテス王が言った。「言って頂ければ使いの者を向かわせましたものを……」
「コー・ホー(訳:まさか王自らお出迎え頂けるとは……)」と、レフグリス=リアスは答えた。「コー・ホー(訳:父オーレスに言っても信じて貰えますまい……)」
「は……?」と、相手の言葉をキチンと聞こうとする誠実・真面目なエルテス王が訊き返した。「いま、なんとおっしゃいました?」
するとレフグリスは、「コー・ホー(訳:ああ、これは失礼……)」と言ってMr.Blu‐Oの方を振り返ると、「コー・ホー(訳:マスクを外しても?)」そう彼女に訊いた。
問われた方のMrは、「ああ、それもそうだね」と、懐から例のラチェットレンチのようなモノを取り出しつつ、「女性陣を屋敷の外に避難させて頂けますか?」と、王にお願いをした。「私はこの白服の吸収機能をアップさせておきますので――」
*
ビービービー。と、丁度その頃、Mrたちのいる地上より三万六千キロほど上空――クワラン・ステーションの賓客向け転送ルームでは、滅多なことでもない限り鳴るハズもない緊急受入用の警報ベルが鳴り響いていた。
「どうした?」と、当直を代わったばかりの技術主任(三十九才・独身)が訊き、「それが理由は不明なんですが……」と、連勤で寝不足気味の転送担当責任者(三十一才・新婚)が答えた。「『急用!直ぐ受け入れろ!』との非常用メッセージが……ウソだろ?!」
「なんだ?!」と、技術主任(ネコ派)。
「こちらの応答を待たずに転送ビームを照射して来ました!」と、転送担当(ウサギ派)。「はあ?」――自殺行為だぞ?「仕方ない。ポートを開けろ」と主任。「実体化後、事情を訊く事にする」――俺は保安部員を呼ぶ。
(続く)




