第十四週:ベールとジャージ(木曜日)
「しかしそれでは、」と、ベール姿の女性・バデナンダが訊いた。「そのフェロモンとやらが、服とマスクの中に充満するのでは?」
ここは、リネリの山裾を外衣の如く覆うミトリの森。祠を立った一行は、バデナンダの案内で、一路王都へと向かっていた。
「それもキチンと考えててね」と、Mr.Blu‐O。レフグリスの方を指差しながら、「この白服に施した金色の刺繍が吸収材&導管の役割をしてて、マスクの中の分と一緒に、腰の小瓶に溜められるようにしたんですよ」と、言った。
「なるほど――」と、レフグリスの方をまじまじと見詰めながらバデナンダ。「ものすごい技術をお持ちなのですね」
「いやあ――」と、照れ笑いしながらMr。「あたしの種族なら小学校で習うレベルですよ……」――最近は失敗続きで(『促成栽培ライト』とか)褒められるのは久々だ。「もちろん。溜まった生化学物質も適切な業者にお渡ししますしね――」
*
さて。賢明なる読者諸姉諸兄の中には、この「適切な――」と云う部分に疑問を持たれた方もおられるだろうから、ここで一応の補足をしておこう。
そう。皆さんお気付きのとおり、この時Mrは、ワザと、説明を不足させている。
と云うのも、彼女の言い方ではまるで、『適切な業者に逆有償でお渡しする』かのように聞こえるが、《どんな女性をも虜にする生化学物質》が逆有償処理に廻されるハズもなく、且つ、今回のソレは銀河に名立たる《ラケダのリアス王のご子息》の、しかも濃縮版である。Mrが某グローバル企業に連絡を入れたところ、1ボトル(30ml)(*検閲が入りました)プランの値を付けても良いそうだが……もちろん、他のメンバーには内緒であり、彼女一人で独占する算段であった。
(続く)




