第十四週:ベールとジャージ(月曜日)
ワダツミの翁の入江の一番奥、葉長く丈高きポリキス・オリーブが間近に見えるその場所に、ミツハの精霊たちの聖所――ほの暗く快いワナガスの祠はあった。
この祠では、四時の祭りともなると、この惑星の王自らが大牢を供え、惑星の繁栄と民の安寧を祈るのであるが、もちろん、これら四時祭の時以外にも、地元の民たちは、それぞれの祈りを捧げに、衣の如く森を纏ったリネリの山裾を抜け、この祠へとやって来るのであった。
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ていとう。ていとう。と、祠の奥から小さな鼓を打つ音が聞こえ、それに続き合わせるかのように、心澄ましたる乙女の声にて、のうのう。と云うウタが聞こえて来た。
「何のウタでしょうか?」初めに、ウタに気が付いたのはアイスオブシディアンであった。
彼女のこの問いに応えようとしたのだろうか?Mr.Blu‐Oが、「ウタは本来、祈りなんだよ」と、言った。「あんたの惑星の象形文字にもそんなんあったよな」
「象形文字?」と、アイス。
「願い事を書いた紙を四角い箱に入れてさ、それをクの字の棒で叩いて、横で人が叫んでる――そういう文字があるやろ?」
「……ヒエログリフとかですか?」
「いや、そんな洒落たんやのうて……」そう言うと彼女は、足元に落ちていた小枝を拾い上げ、おもむろに、何やら地面に文字を書き始めた。「あたしも自動翻訳に頼り切ってるからさ、合ってるかどうかは分かんないんだけど……ほら、こんな感じ」
彼女の足元には、拙いが、それでもハッキリと分かる形で、《歌》と云う文字が描かれてあった。「なんだっけ?――《漢字》って言うんだっけ?」――ていとう。ていとう。と、鼓を打つ音が少し強くなり、まるで一行を誘っているようでもあった。
(続く)




