第二週:F社と封神大戦(月曜日)
「信仰の力こそが神々の力であった」そう緑の肌の老人は言った。三本指の手に横に長い耳。敢えて似ている有名人を上げるとすれば、依田義賢さん〔溝口健二監督の中期から後期の脚本を手がけたことで有名な大阪芸術大学の元映像学科長〕にどことなく雰囲気が似ているが、老人が地球人でないことは明らかだ。
「しかして、」と老人は続ける。「かつては少数であった神々が地に満ち海に満ちたことで争いが起きた――信仰の奪い合いじゃ」
ここは第二十五スペースタートル異星人居留地。地球人類と同様に『大銀河グレーテストオリンピック』で行き場を失くし流れ着いた異星人たちの、新しい居住惑星を見付けるまでの仮の住まいのひとつである。
「つまりそれは、」と、キム=アイスオブシディアンは訊いた。「『いいね!』みたいなものですか?」
オリンピックのごたごたで父を亡くしてから既に三年の月日が過ぎようとしていたが、彼女はまだ若く、仕官に出てはいなかった。
地球が破壊されたとき、キム家には三百人もの召使がいたが、文字どおり土地家屋はすべて無くなり、彼女は父親の弔いも十分には出来ず、そのことをずっと悔いていた。
そこで、どうにかして父の霊を弔いたいと想い、西銀河における「礼」のメッカである南シュシュイ星から来たと言うこの老人にそれを学びに来たのであった。
「お若いの、なかなか筋が良いようじゃの」と、いよいよもって某SF映画の有名キャラクターに似た感じを出しながら老人が言う。「まさに、その『いいね!』の奪い合いこそが、地に満ち、海に満ちた神々のレーゾンデートルとなってしまったのじゃよ」
「しかし、」と、レーゾンデートルってなんだっけ?と思いつつアイスオブシディアンが訊いた。「信仰は『いいね!』のように数えられないのでは?」
(続く)




