第十三週:マスクとゴーグル(月曜日)
さて。『銀河の美女が三千人』とは、西銀河史上最大のモテ男・レフグリス=リアスへの求婚を行なった女性の数――と神話や伝説にはあるが、流石にこれは盛り過ぎであろう。
少し考えれば分かることだが、いくら彼が微笑み一つで戦を止めたり(両陣営の指導者を腰砕けにして)、不治の病の女性を治したり(一晩添い寝して)するほどの美男子であったとしても〔作者注:上記二例は西銀河帝国の史書へ記載あり〕、また、他家に婿入りするしかない三男坊だったとしても、そこはそれ、西銀河での誉れも高いラケダのオーレス=リアス王のご子息である。その辺の女性がいくら惚れたからと云って、または声を掛けられたからと云って、おいそれと結婚を申し込んで良い相手ではないし、もしそんなことをすれば、銀河に散らばるレフグリス・ファンクラブのお姉さま・お兄さま方に、公式・非公式を問わず、命を狙われることになっていたであろう。〔作者注:実際、そう疑われる事例も二十数件記録されている〕
しかも、レフグリスの地元ラケダ星――特に王侯貴族の間では、何千年もの間、一夫一妻制が婚姻の基本……と云うか暗黙の了解事項となっており、他家に嫁する・婿入りする場合も、この掟が厳守されていたと云うのだから、彼への求婚が可能な女性の数は、かなり限られると考えるのが妥当だ――まあ、「公式に認められる求婚者」って意味ではあるが。
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「三十八人?」と、ショワ=ウーは訊き返した。「それは、羨ましい」――自分なぞはつい最近、童女に求婚し掛けたところだ。
「なにが羨ましいものですか」と、問題の美男子・レフグリス=リアスが、足を組み替えながら言った。「直接会ったこともない方々ですよ?」――そう言えば、あなた、さっき私を口説こうとしましたよね?「私は、たった一人の、運命の女性に出会いたいのです」
(続く)




