第十二週:レオンとマチルダ(金曜日)
『可憐だ……』と、ショワ=ウーは想った。
それはもちろん、目の前の、元のサイズ(九才八ヶ月)に戻ったアイスオブシディアンの事ではなく――彼女は今、興奮冷めやらぬと云った様子で、ピョン。と跳ねた寝ぐせもそのままに、ミズチ退治でウーが見せた力の考察を行っている――彼らのテーブルの斜め向かい、壁際のテーブルに座る一人の麗人に向けての感想であった。
*
「可憐だ……」と、ショワ=ウーはつい言葉に出してしまった……が、幸い他の皆は会話や食事に夢中で、彼のこの呟きを聞き取るものはいなかった――唯一、その麗人を除いて。
自分を見詰める彼の視線と呟きに気付いたその人は、開いていた照射型4Dデバイスのページを閉じると、ショワ=ウーが好むであろう素振りとタイミングで――彼が好むであろう適度な艶やかさを含めつつ、彼に微笑を送った――なるほど、噂通りの人のようだ。
*
「すまない……」と、アイスオブシディアン以下メンバーに断りを入れてからウーは、テーブルを立つと、その麗人――淡い褐色の肌は収穫期のオペンシア=サフライ大麦畑を想い起こさせ、金染めの絹糸を束ねたようなその髪は朝焼けに染まるハイヘブの雲にも勝り、その厚く美しい唇は……朝のまだきに生まれ未だ目覚めぬバラ色の女神のようであった――の元へと向かった。
*
「オレは光だからよく分からねえんだけどよ」と、そんなウーの背中を見詰めながらセイ・カハが言った。「――アレはアレでマズいんじゃねえか?」
「うん?……あー、あれは流石にマズイね」と、四十二個目のムラサキ草木クサ団子を口に入れながらMr.Blu‐Oが応えた。「――ラケダのオーレス王の三男坊じゃん」
(続く)




