第十一週:怪獣と狂獣(金曜日)
それから後は、盾も大刀も不要であった。
ミズチの牙により穿たれたショワ=ウーの体の孔を闇が埋める。孔から溢れ出していた血液は内へと戻り、止まり掛けていた心臓も、闇が優しく包み、その鼓動を蘇らせた。
飲み込んだ生き物の、その再びの鼓動を感じたミズチの顎は、彼を外へと吐き出そうとしたが、その瞬間、腐り溶化し穴を開けた。
くぱり。と、大きく穴を開けた下顎からウーが滑り出す。そうして、そのまま、その右の手の先でミズチの頸を縦に割いた。今度はミズチが、大量の血を流す番となった。
ミズチの、残り三つの頭は、この異変に気付くと同時に、彼に向けて火炎を吐いた。
が、これもやはり無駄であった。地獄の業火の如きその火炎は、本物のあの世の闇の前で溶けて凍り、ショワ=ウーの身体には触れることすら出来なかった。
そうして、この火炎に気付いたウーは、ゆっくり、且つ、この地の神霊への敬意を忘れぬ歩き方で残りの頭に近付くと、先ずは右の手の平で、次に左の手の肘で、二つの頭を頸から離し、左の足で地を蹴った――地は割れ、天は動き、噴き出した溶岩が哀れなこの生き物を地中深くへと飲み込んで行く。
ミズチの身体は焼かれ、熔かされ、その全てがこの惑星の一部へと取り込まれて行く――と、ショワ=ウーには想われた。
が、その時、頸に巻いた飾りから、「タンク・サブシスト・パルクラ・エス」と唱える男――正確には青い光だが――の声がし、不意に、四秒程度――と、止まった時を数えるのも妙だが、その青い光以外の時が止まった。
それから後、セイ・カハは、自身に課せられた一つの課題――ミズチが誤って飲み込んだタイムパトロール隊の備品『促成栽培ライト』の回収――を終らせると、建物の奥に隠れているMr.Blu‐Oに向かって、「終わったぜ」と叫んだ。「出て来な、バアさん」
(続く)




