第十一週:怪獣と狂獣(水曜日)
さて。このミズチ退治に際してショワ=ウーがオットー・オーガナ姫から仮受けていた大刀は、現在も『リューズ・グッド・ジョー』の資料保管庫に大切に保管されている。
作者は以前、ある機会に、その大刀を見せて頂いた事があるが、ミズチの血を浴び玄く変色したと云うその刀身は合せて約120cm。柄には当時の名残りであろう人の手の跡も生々しく、史書にある通り、刃の毀け著しく、刀身は、中途で二つに割れていた。
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大刀を抜くと同時にショワ=ウーは飛んだ。先ずは目の前にあるミズチの首である。女将の酒がヤツにどの程度効いているか、或いは効いていないのか分からないが、八つ頭のうち一つでも目覚めてしまえば勝ち目は無くなる――と考えておいた方が良いだろう。
一つ目の頸を縦に割く。想像以上の硬さと重さだ。切り落とすことは無理であろう。頸動脈を探し其処を切る。玄黒の血が噴き出す。頭が悲鳴を上げ、他の頭がピクリと動いた。
二つ目、三つ目の頸を同様に切る。四つ目――の頸動脈を探しているところで、ドン。と云う音とともにハイヘブ本宮の金剛柱を想わせる太さ・硬さのミズチの尾が、蠅を追い払う猛牛の尾の如くウーを襲った。
漆黒の闇を想わせるその尾を躱し、四つ目の頸動脈を切った――と想った瞬間、最も遠くにあった頭が目を覚ました。毒が切れたのか、余りの痛さに我に返ったのか、身に纏う小さな炎をその口に集めようとしているのが見えた――が、その頸までは遠過ぎる。
ゴオ。と云う炎を吐く音がした。ヤツの尾の陰に隠れる。炎は容赦なく自身の尻尾ごとウーを燃やしに掛かる。このままでは残りの頭も目覚めてしまう。残りの頭は四つ。余りにも分が悪い……そう想った時、残りの頭の一つが目覚めるや否やウーを襲い――そして彼は暗闇に飲み込まれて行った。
(続く)




