第十一週:怪獣と狂獣(火曜日)
さて。この広い広い宇宙には本当に様々な求愛行動を示す種族がいるが、その中でもナロソ=ナハ星に住むモトモケレ族のそれは特筆に値するであろう。
と云うのも、多くの有性生殖生物がそうであるように、この種族もまた生殖行為の主導権を握るのはメスなワケだが、繁殖期を迎えた彼女たちは、「これ」と想われるオスを3~5人ほど食事に誘い出すと、丹精込めた手料理で彼らをもてなす――が、その際、その料理には、愛情以外にも彼女たちの分泌物(例えば唾液)が込められることになっている。
すると、この料理を食べたオスたちは、突如として、急な息切れ・胸痛・動悸・不整脈・失神・眩暈・心異常・高血圧・躁鬱症状・酷い下痢……等々の症状を呈し、場合によっては死に至る場合もある――のだが、これこそが彼女たちによるパートナー選びであり、この修羅場から無事最初に生還した者が、彼女たちとの性交に臨む機会を得るワケである。
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さて。いきなり何の話をしているのかと訝しがられる方もあるかと想うが、我々はつい最近、このモトモケレ族の女性を二名、『リューズ・グッド・ジョー』で見掛けている。
そう。例の看板食堂『オホーゲイツ』の女将とウェイトレスである。
そう。今、例のミズチが頭を入れたその酒は、先週月曜日の連載で「(女将が)必死に噛んで醸した」と書いたあの酒の高醇化版なのである。
繁殖期でない彼女の唾液中にどの程度の生化学物質が含まれていたかは不明だが、フェロモン全開のショワ=ウーに煽て上げられ繁殖期並みかそれ以上の物質を彼女が分泌していたであろうことは想像に難くない。
ざぶり。ごくり。ごくり。――その芳気とホドラドシルクもかくやと云う滑らかな舌触りに欺かれ、八つ頭それぞれが酒のタンクを空にし――そこでミズチは座睡した。
(続く)




