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第十週:酒と涙と男と女(金曜日)

 河と火山の惑星『リノンヤナ』でも、ゴコシチンシンヤチマタミズチが降立つ場所は大河『オンノカ』の一部流域に限定されていた。


 その為、その周辺住民たちにおいては、このバケモノが現れる時期になると、別の土地又は惑星へと避難すると云うスキームが、この八年の間にキッチリシッカリ共有されており、ショワ=ウー考案の防御壁等決戦兵器の準備は、彼が一人で行うことになった。


 が、まあ、そこは腐ってもイン=ビト王が末子ショワ=ウーである。惑星到着後半日もしない間に、直径1kmに及ぶ円形の防御壁を設けると、そこに等間隔の八つの門を造り、その門ごとに例の酒が入ったタンクを設置していた――何処かで見たような作戦ですね。


「元ネタは『マンガで分かる大銀河動物大辞典(怪獣・狂獣編)』だ」と、ウーは言った。「我が惑星では怪獣・狂獣の駆除・捕獲の実用書として大変重宝されている」


 ――ちなみに、昆虫類に特化した『マンガで分かる大銀河昆虫大辞典』も絶賛好評発売中のヤシヲオオホリコヤナギ社は、神話や噂話に目のない編集長が立ち上げた中堅出版社である。


 このショワ=ウーの言葉に金髪の老婆と黒髪の少女は目を合わせたが、その時、空中から何かとてつもなく大きな物体が天を切り裂き落ちて来る音がし、直後、地を引き割くような轟音と伴に大地が大きく揺れた。


「来たな――」と、久々の獲物に戦士としての血が騒ぐのだろう、緑の瞳を赤に変えつつウーが言った。「婦人は建物の奥へ」声は冷静だが楽しそうだ。


「私は?」少女が訊いた。


「君は……失礼」そう言うと彼は、口から銀の頚飾を吐き出した――ミトとの戦いで飲み込んだあの頚飾である。「――これに入っていてくれ」ミズチの狙いが君である以上、君は私といた方が安全だし、エサにもなる。


 そうして少女は頚飾へと取り込まれ、ウーは、その飾りを首に巻き、外へと向かった。



(続く)

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