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第十週:酒と涙と男と女(水曜日)

 さて。


『死者の魂は、モノを媒介として生者の世界にコンタクトする』とは昨日書いた通りだが、実は、この『モノ』は、イコール『その魂が生前使用していたモノ』である必要はない。それは例えば、死者の墓の横で偶然見付けた黄色の石や、死者の命日に咲いた天蓋花でも良いワケで、ショワ=ウーの一族であれば、それは彼らの長く伸ばした髪や髭や一族の模様を施した武器等でもあった。


     *


「つまり――」と、黒髪の少女が訊いた。「髪と髭を切られた分、能力……と云うか、死者からの加護が減った……それでお酒も?」


「あたしも見るまでは信じてなかったんだけどさ――」と、手と顔に貼り付けている老人風スキンシートを外しながら金髪の女性は答えた。「あの王子さまの髪や髭周りに何かしらのエネルギーが集まって来ているのは確かだね――どんな理屈かは分かんないけど」


「では、今も繋がってはいるんですか?」


「多分ね。あれで髪が長くて故郷――と云うか『死者の惑星』とやらにも近ければ、もっと強いエネルギーになるんやろうけど……」


「けど?」


「だとしても、本部の資料で見たようなバケモノじみた力は持てないような気がするんだよね――計器の故障かなあ?」


 そう言って女性は、服の内ポケットから小型のラチェットレンチのようなものを取り出すと、改めてそのゲージを見ようとした。が、そこに、コンコン。と、部屋の扉を叩く音がしたため、慌ててレンチを隠すと、外したばかりの老人風スキンシートをその顔と手に付け始めた。「――ごめん。あんたが出て」


 そう言われて少女は、自身の役柄――バケモノの供物にされ掛けている薄倖の黒髪美少女(笑)――を想い出しながら扉を開けた。


「準備は整った」ショワ=ウーが立っていた。「君の惑星に向かおう」



(続く)

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