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第十週:酒と涙と男と女(火曜日)

 さて。


『モノにはそれを使っていた人の魂が宿る』とは宇宙のあらゆる文明でよく耳にする言葉であり、それは例えば、エスラグ星ゴドピ族の七玉には彼らの歴代君主の魂が宿っていたり、銀河流浪のゲダウォル人に伝わる三つの指輪には、彼らがカプタハ星を手放した原因の一つであるロン=シャウの魂が三つに分れて入れられている――と云うような物語として伝えられていたりもするのだが、実はこれにはちょっとした誤解がある。


 と云うのも、先々週のこの連載でも触れた『ハドルツ』の例が示すように、死んだ人の魂の行き先と云うのは――まあ、場所によってバラバラではあるが――きちんと用意されていて、それらが玉や指輪や真床覆衾の中や周囲に留まると云うことは、本来は起こり得ない――熱力学の法則に反しちゃうからね。


 では何故、冒頭に述べたような物語が宇宙のあらゆる文明で見られるのかと云うと、それは、宇宙の生者たちの多くが一様に同じ勘違いをしているからである。


 そう。


 それはつまり、死んだ人の魂は、生前使用していたモノに『宿る』のではなく、『それを媒介として生者の世界にコンタクトする』のである。


     *


「ウーさん?ウーさん?」そう自分を呼ぶ声がする。タルヤ様だろうか?……いや、彼女がハイヘブを離れることはない。……では、母だろうか?……いや、母上は私を産まれる前にハドルツに旅立たれた。声も知らない。……では、この女性は?この氷種黒曜石のような瞳は?……いや、それよりもここは?


「大丈夫ですか?お酒を飲み過ぎたとか――」酒?酒如きでこのショワ=ウーが倒れるハズが……なるほど、この酒なら。


「案ずるな、乙女よ」バケモノ退治を前にしたちょっとした失態だ。「久しぶりの強い酒に、体が驚いたようだ――」



(続く)

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