第十週:酒と涙と男と女(月曜日)
「お酒ですか?」と、『リューズ・グッド・ジョー』の看板食堂『オホーゲイツ』の女将が言った。「それは……銀河中から取り寄せておりますけれど」――やっぱり近くで見ると更に男前ね。まさか王子さまとは思ってもみなかったけれど……。
「一番強くて呑み易い酒は何だ?チャタヌガバッタンはあるか?」と、ショワ=ウー。「それか、ボボボボッカでも良い」
その二つの銘柄を聞いて女将は、その大きな顔に埋もれた小さな目をキラリと光らせると、「そう云うのは度数は高いですけどね……」と、カウンター奥の冷蔵庫から一口の小さな甕を取り出し、「呑み易さも考えるなら、こちらが最高ですね」と言った。
「この酒は……?」と、出された湯呑み茶碗の中のドロリとした液体を訝しげに覗き込みながらウーが訊く。「何と言う名の酒だ?」――見たことも嗅いだこともないが???
「まあまあ、お酒も女と一緒――」と、女将は言うと、「名前などより、先ずは中身です」と、彼に飲むよう促がした。
「まあ、それもそうだな……」と、一抹の不安を感じながらもウーは、湯呑みに口をつけて、先ずは一口。「……ほお、口当たりは柔らかく滑らかで……少々甘口だな」
「ほら、グイッと飲って下さいな」と、女将――まあ、この人なら死ぬことはないだろう。
「あ、ああ……」グイッ。「いや、しかし、これは飲みやすいな。甘いだけではなく苦みや酸味のバランスも絶妙だ――」どこかしら、先ほど食べた『五穀プラスα丼』に似た感じもするが――いや、しかし、これは止まらない。グイッ。「代わりを貰えるか?」
そう言われて女将も少々驚いたが、ここまで喜んで貰えるなら、必死に噛んで醸した甲斐もある。「ええ、もう、何杯でも――」と、代わりを注ごうとした瞬間、「あれ?」と言う声とともに、ウーがその場に倒れた。
(続く)




