第九週:嘘と演技(金曜日)
『可憐だ……』と、ショワ=ウーは想った。
会議用テーブルの、彼の丁度向かいの席に座らされたその少女は、肌の白さはほの暗い総司令官室の中で銀色に光り、しっとり濡れた絹糸のような黒髪はルルナイ宮の夜の女神を想わせるほど、そうして極め付きは、その柔かく透き通るような深く黒い瞳であるが、それはまるで――そう、それはまるで氷種黒曜石のようであった。
「可憐だ……」と、ショワ=ウーはつい言葉に出してしまったが、幸い他の皆はバケモノ退治の話に夢中で彼のこの呟きを聞き取るものはいなかった――唯一その少女を除いて。
自分を見詰める彼の視線と呟きに気付いた少女は、我と我が身に起こった不運を涙ながらに訴え掛けている金髪の祖母――の役を熱演している傍らの女性に気付かれないように――と、ショワ=ウーが想うような素振りとタイミングで――少々のあでやかさを含めつつ、彼に微笑を送った。――なるほど、資料通りの人のようだ。
*
「そのようなことが起こりまして、私ども夫婦には八人の孫娘がいたのですが――」と、今の体にはどうもしっくり来てくれない銀河標準語を用いながら金髪の老婆は訴える。
「ゴコシチンシンヤチマタミズチが一年に一度我々の惑星に降り立つと、彼女たちを毎年一人ずつ、その口に飲み込み去って行くようになったのです……」ここで老婆は両の目からナイアガラの滝の如き滂沱の涙を流すと、「そうして、それから八年――最後に残ったこの娘も連れ去られる季節が巡って来……ああ、どうか!どうか!我々をお助け下さい!!」と、続けた。
――うん。我ながらの名演技やな。後はウー王子が乗ってくるかどうかやけども……。
「案ずるな、ご婦人」彼が答えた。「このショワ=ウー。一肌脱ごう」
(続く)




