第九週:嘘と演技(木曜日)
「ゴコシチンシンヤチマタミズチ?」訝しそうな表情でショワ=ウーが言う。「いや、初めて聞いた」――少なくとも、王宮図書館の『マンガで分かる大銀河動物大辞典 (怪獣・狂獣編)』には載っていなかったように思う。
食事を中断された彼が呼ばれた総司令官室には、会議用のテーブルにウーの他にオーガナ姫とそのヒラメ型宇宙人の秘書、それに人型の老人が一人座っていて、出入口扉の前には堅甲利兵を絵に描いたような大型のサイ型宇宙人が二人、腕組みをして立っていた。
「ひょっとすると、他の星系では別の名で呼ばれているのかも知れませんが――」と、深みと知性と教養を感じさせる声で老人が言った。「大地を覆う巨体に赤い炎をまとった、八つ頭のバケモノです」
「……巨体とは?」と、ショワ=ウー。
「体長で言うと約1km」と、老人が答える。「体重は……我々の測量では88tほどですが、無重力フィールドでも発生させているのか、空を飛ぶことも出来ます」
「なるほど……」と、ショワ=ウー。背筋に冷たいものを感じつつも、胸の辺りが熱く高鳴って行くのが分かった――三つ頭の黄金色ドラゴンなら倒したことがあるが、八つ頭は初めてだ。しかもあちらは空を飛ぶのに翼を使っていた。
「グラビティ光線とかは?」ウーが訊いた。
「はい?」虚を突かれた感じで老人が訊き返す。「……グラビティ光線とは?」
「ああ、すまない。以前倒したバケモノがそういう名前の光線を吐いたんだ」と、ウー。
「なるほど……」なるほど。この人も想像以上の化け物のようだ。「そう云う意味では……身にまとった炎を八つの口から吐き出すことはありますね」
プシュ。と、総司令官室の扉が開き、金髪の老婆と、彼女とは対照的な黒髪の少女が中へと入って来た。
(続く)




