第九週:嘘と演技(水曜日)
「五穀プラスα丼お待たせ致しました」と、でっぷりとした体型のウェイトレスが言った。
「プラスα?」と、出された丼を訝しげに見ながらショワ=ウーが訊いた。「頼みましたっけ?」
「いいええ、」と、ウェイトレス。「女将さんが『良い男だからサービスしろ』って」
「ああ、」言われてみれば、先ほどから似たような体型の女性が調理場からこちらにウインクを寄越し続けている。「では、遠慮なく……ちなみに、プラスαってなんですか?」
「ええ?ウフフ……」と、以前存在した地球とか云う惑星のエビスとか云う神さまそっくりの笑顔でウェイトレスが返した。「……女将さんの、ラ・ブ・ですって!」
うーん?以前の自分ならば既に彼女を縊り殺しているところだが、背に腹は代えられず、腹が減り過ぎているのも事実だ。「分かりました……女将さんによろしくお伝え下さい」
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さて。と云うことで、ここはケンタウロス星系内にある永世中立宇宙ステーション『リューズ・グッド・ジョー』の看板食堂『オホーゲイツ』である。が、ちなみに、ここの名物料理「五穀プラスα丼」と云うのは――稲種・粟・小豆・麦・大豆の五穀をまとめて炊いたものに「プラスα」として糸をたっぷり吐き出した後の蚕を中華油で香ばしく炒めてふんだんにまぶしたものである……が、まあ、ウーも美味しそうに食べていることだし、あんまり突っ込むのはよしておこう。うん。
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「あちらが?」と、そんなショワ=ウーを監視カメラ越しに見詰める一人の女性がいた。この宇宙ステーションの総司令官を務める・アシカ型宇宙人オットー・オーガナ姫である。
「そのようですね」と、彼女の後方、総司令官室の出入口付近に立つ一人の老人が答えた。「イン=ビト王の王子ウー様です」
(続く)




