第一週:時間旅行とオリンピック(木曜日)
『ギャラクシー・オリンピック』の起源については、簡易なタイムトラベル理論が発見された未来と云うか現在と云うか(時間を自由に行き来出来るのなら未来とか過去とか関係なくない?)あっちの方の宇宙においても、未だ諸説紛々としているそうである。
多分きっと、様々な学派が違法に過去に介入しては歴史を書き換えたり書き換えられたりしているために起源そのものも行ったり来たりを繰り返させられてでもいるのであろうが、そのため、以下述べる複数の説についても『ああ、今はそんな感じなのね』ぐらいに捉えておいて頂いたほうが無難かと思われる。
先ず、最もポピュラーな説としては、アルファケンタウリ出身の詩人ホスタージによる『七百年戦争で死んだ英雄パパスグロリの魂の安寧のため東部銀河連合軍が行った競技会が起源』説で、歴史の教科書等にもよく掲載されるのはこちらの説である。
また、その他の説としては『約束を破ったシャニマ王の都を攻めたグロラディが、その廃墟に四百年の歳月を費やして全主神殿を建てたことに由来する説』『恒星間戦車競走でアルファ王がオメガ王を殺し、更にはその娘と娘と内通していた乳母を殺しブラックホールから生還したことを祝った説』等があるが、いずれにせよ、あまりにも古過ぎる話ばかりであり、それらの競技会は何らかの事情で断絶してもいるし、歴史時代の『ギャラクシー・オリンピック』とは連続性をもたない――と考えるのが常識的な判断であろう。
更に、いま俎上に上がっている『大銀河グレーテストオリンピック』に至っては、これらとの連続性もなにも、どこかの広告代理惑星の万年釣りバカ平社員が思い付きで考案した商業主義特化型の祭典であり『腐るほど金を持ったアホを見返してやりたい、腐るほど金を持ったアホが誘致する祭典』と云うのが銀河もっぱらの評価であったりする。
(続く)