第七週:呪文と旧友(火曜日)
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「滅びの呪文を」テレビの中の少女が叫んだ。
「これだ!」テレビの前のMr.Blu‐O(三代前)も叫んだ。「私の《ケイバーリット》にも、音声認識機能を付けよう」
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皇帝襲撃の一年二週間三日前、この音声認識機能についてMr.Blu‐Oは、アイスオブシディアンに次のような忠告をしている。
「長いんのもあるけど、九つだけやし、ちゃんと憶えるんやで」――そして、「昔の人も言うたように、《幸福になるには悪い意味の言葉も覚えていなければいけない》――キチンと全部覚えるんやで」と。
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「クルンテープ・マハーナコーン・アモーンラッタナコーシン・マヒンタラーユッタヤー」アイスとセイの叫ぶ声が、室内に響き渡る。
「……なんだそれは?」と、皇帝が訊く。
が、それには構わず二人の詠唱は続く。
「マハーディロック・ポップ・ノッパラット・ラーチャタニーブリーロム」
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「〇ルス!」テレビの中の少女少年が叫んだ。
「ええ?!」と、テレビの前のMr.Blu‐O(赤毛・丸顔)も叫んだ。「そんな簡単な呪文で良いの?」
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「ウドムラーチャニウェート・マハーサターンアモーンピマーン・アワターンサティット」
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テレビが終わった。感動の余韻冷めやらぬままMrは、それでも手近の本棚から一冊の地図を取り出すと、呪文に向いていそうな長い長い地名を見付け、そこに赤線を引いた。
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「サッカタッティヤウィサヌカム……プラシット!」――バンコクの正式名称だった。
(続く)
*ラーメンズ第17回公演『TOWER』を参照のこと。




