第七週:呪文と旧友(月曜日)
『逃げて下さい』と、キム=アイスオブシディアンは合図を送った。『……あとは私が』彼女の手にはMr.Blu‐O特製のペンダントが握られていた。
その様子を見たセイ・カハは、きっとすべてを悟ったのだろう、小さく首を横に振ると、『一緒にやろう』と、彼女に合図を返した。『……仲間じゃないか』
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さて。先週月曜日のこの連載でも書いた通り、いま、ここで、アイスオブシディアンが握りしめているペンダントには、九つの呪文――音声認識コマンド――が入っている。
それは例えば、目的地までの道を照らすためのコマンドであったり、探し物を見付けるためのコマンドであったり、ペンダントの周囲七キロ四方の時空を消し去るためのコマンドであったりする。
つまり、いま、ここで、セイ・カハが「すべてを悟った」のは、アイスオブシディアンが、コンパルディノスを倒すため、自分も含めた七キロ四方の時空を消し去ろうとしている――と云うことであった。
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「小娘、名前を聞いておこう」そう皇帝は言うと、「一族――いや、惑星ごと滅ぼしてやる」と、空いている方の手を彼女に向けた。
「惑星も一族も――」そうアイスオブシディアンは言うと、「すでにあなたに滅ぼされたわ」と、首から外した石を皇帝の方に向けた。
この時、セイの動きを封じていた皇帝の左の手が一瞬ゆるんだ――アイスオブシディアンの持つ青い石に虚を突かれたのである。
「それは?」皇帝が訊く。「――あの男の?」
その一瞬にセイ・カハは、皇帝の手を逃れるとアイスの元へと向かい、その光で彼女を優しく包み込むと、「オレは逃げねえぞ」と言った。
「嬢ちゃん。『滅びの呪文』を――」
(続く)




