第五週:星屑とケイバーリット(金曜日)
さて。先ず、結論から書くと、キム=アイスオブシディアンとセイ・カハによる今回のコンパルディノス襲撃は、失敗に終わった。
いや、アイディアが悪かったワケではない。小惑星=星屑たちの間を抜けるため、帝国の艦隊はスランティシリオゴゴオオムカデのように細く長く伸び、且つ、コンパルディノスの乗る大型旗艦のフォースフィールドは十分に弱められていた。まさに襲撃には打ってつけの状況だったと言えるであろう。
また、計画段階でのミスがあったワケでもない。アイスオブシディアンが、帝国内部の関係者から事前に入手した情報通りの、時と場所と配置で、コンパルディノスの艦隊はこの小惑星帯を通過していたからである。
更に、実行段階でのミスがあったワケでもない。数百回に及んだ事前シミュレーションの通りに、アイスオブシディアンは『黄石』を配置し、セイ・カハも星屑たちを動かし、星屑たちもその通りに動いたからである。
長く縦に伸びた艦隊の中に旗艦クラスは四隻。そのうち色の違う三隻目――その黒紫色の艦の側面に、星屑たちの雨――東銀河帝国の施策により国を追われた者や住む星を奪われた者、皇帝の趣味や暇潰しのために愛する人や一族を失った者たち。その嘆きや怒りや悲しみを代弁するかのような星屑たちの雨――は、降り注いで行った。
そうして、やがて、目標の艦から火の手が上がった。その火は即座に、連鎖反応的に、艦全体へと拡がり、乗組員たちが救命ボートで飛び出して行くのが見えた――と、ほぼ同時に、黒紫色の艦が沈んで行くのも見えた。
キム=アイスオブシディアンとセイ・カハは、これらの様子を、少し離れた星屑の上に立って見、快哉を叫んだ――が、その喜びも束の間、傍受していた艦隊の亜空間通信を通して、この襲撃が失敗に終わったことを知った。皇帝の声が、聞こえて来ていた。
(続く)




