第四週:光と九生(火曜日)
我々人類のダメなところと云うか頭の悪いところのひとつに、ついつい物事を自分の物差しだけで見てしまう――と云うものがある。
それは例えば、犬や猿や雉や亀や蛙が自分たちに何か伝えようとするなら、我々と似たような言葉なりジェスチャーなりをすると思い込んでいたりするようなことであるし(例えば、地球が破壊される直前、そのことを飼い主に伝えようとしたあるボーダーコリーは、彼女の顔をいつもより三回余分に舐めた後、いつもより二回余分に飛び跳ねて彼女にその危機を伝えようとした)、また例えば、自分たちがそうであるように、宇宙中のヒト型生物もすべて、生まれてから死ぬまでずっと同じ体でいると思っていることであったりする。
そう。つまり、この広い広い宇宙には、いまここにいる『Mr.Blu‐O』と呼ばれる女性の種族がそうであるように、また地球のある猫の一族がかつてそうであったように、ひとつの体に九つの命を持った種族も存在するのである。
しかも彼女の種族の場合は、件の猫の一族が生まれた時の身体を保持したまま九度の猫生を生きるのとは異なり、一つの身体が死ぬたび――もちろん以前の記憶と魂は引き継いだまま――別の身体になって蘇えるのである。
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「せやさかい、アイツが知っとんのは、わたしは私でも、ひとつ前の、筋肉むきむきで、耳と鼻がやたらに大きゅうて、どっちかっちゅうと好戦的な、昔の私なの」と、女性は言う。「で、今はこの通り、キレイでセクシー……ちゅうには胸は足らんけども、お尻はエエ形しとるやろ?な、平和主義的お姉さまに生まれ変わったってワケ――文字通りな」
そう言われてアイスオブシディアンは何かを言おうとしたが、それを遮るように彼女は、
「だから、かたき討ちには付き合えんちゅうこと」と畳み掛けるように言った。
(続く)




