第三十二週:崩御と協力者(火曜日)
さて。以前この連載でも書いたように (第六週の金曜日)、コンパルディノス二世の版図巡行の理由について、民間流布の巷説の一つに『不老不死、或いは、生まれ変わりの技術を探すため』と云うものがあった。
もちろん真偽のほどは定かではないが、史書や資料を読み込んで行くと、それを匂わせる記述が散見されていたりもする。
それは例えば、『転生の法を持つと云う 《火主》族探索のため、東銀河深奥にクシュ=ウェルを遣わせた』とか『オートマータ族のとあるギルドに怪しげなナノマシン薬製造のための資金を提供し続けた』と云った類いの記述ではあるが、私も含め、専門家の一部は、彼が自身の体を使い、《転生の法》や 《怪しげなナノマシン薬》を実際に試していたのではないか……そのため、逆に命を縮めたのではないか……と云う風に考えている。
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「つまりアイツは、病気?……天命?……いや……天罰?よう知らんけど……つまり、そう云うモンで亡くなったっちゅうこっちゃ」
そう言ってMr.Blu‐Oは、いつもと同じ笑顔と強さで、その碧い眼と本心を隠そうとした。
「なんで笑ってやがる?」と、そんな彼女の笑顔と強さに、反発の意を示したのはセイ・カハであった。
「うん?」と、笑顔の一欠けらも崩さずMr。
「オレと嬢ちゃんがどんな想いでアイツを追ってたか知ってんだろ?」と、セイ。「――よく、そんな顔が出来んな」
「はっはー」と、ふたたびの笑顔と強さで笑うMrだったが、一瞬だけ目を開くと、実験室の中央に置いてあったソファへ、ドッ。っと、頭から倒れ込んだ。
それから、こちらを心配そうに見詰めるアイスオブシディアンの方を指差すと、「そもそも、最初に言ったやろ?」と、続けた。
(続く)