第三十二週:崩御と協力者(月曜日)
「ルザディオクレスが……?」コンパルディノス二世の死に接し、彼の本来の名を口にしたのは、この広い宇宙でもMr.Blu‐Oだけだったかも知れない。「……死んだ?」
そうしてまた、この報に違う意味で衝撃を受けていた者が彼女の近くに二名ほどいた。
「……本当ですか?」
先ず、そう訊いたのは、アイスオブシディアンであった。――誰が、私の代わりに?
「……殺ったのは?」
次に、そう訊いたのは、セイ・カハであった。――誰が、オレ達に出来なかったことを?
「あ、えと、そうですね……」と、明らかに変わった三人の様子に戸惑いながらリチャード・P・シルバーは、その携帯型デバイスに届いたニュースを読み上げ始めた。
「えー、『東銀河標準時昨夜未明。東銀河帝国第十一代皇帝コンパルディノス二世の崩御が帝国議会より公表された――』云々とあって、『崩御自体は二十日ほど前。巡行先でのことであり』だそうで、丞相らの判断で本星に到着まで秘密にされていたようです……」
「……殺ったのは?」と、ふたたびセイが、少し苛立った様子で訊く。
「あ、はい……」と、こちらも少し焦りつつ、シルバーが答える。「『皇帝の死因について、議会は公表を差し控えているが……』云々かんぬん……えーっと、識者の予測では……」
「病気やろ?」と、シルバーの言葉を遮る形でMrが言った。「天命かも知れんけど……」
「病気?」と、訊き返したのは、アイスオブシディアンであった。――そんな簡単な?
「何ヶ月か前、あんたに呼ばれてアイツと会ったやろ?」と、Mr。「そん時、目の様子がおかしかったから、持って帰ったアイツの鼻毛を調べてみたんよ」――そう言えば、そんなことありましたね。
「不老不死のため……か何か知らんけど、毒性の強いナノマシンに犯されとった――」
(続く)