第三十一週:丘とラウンジスーツ(月曜日)
さて。この連載の第五週でも書いたことだが、東銀河帝国第十一代皇帝コンパルディノス二世が好んだもののひとつに、東西銀河を巡る版図巡行があった。
が、しかし、その理由については、自身の偉大さを示すため、不老不死の秘薬を探すため等々、様々な説が流布してはいるものの、実際のところ史書には何も書かれてはおらず、これと云った定説もない……今のところは。
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「皇帝が地球に?」そう訊いたのはアイスオブシディアンであった。あの傲慢な皇帝が地球のような辺境惑星を気に掛けるとは想いも寄らなかったからである。
「正確には、地球の衛星にあったホテルに立ち寄ったみたいやけどね」と、返したのはMr.Blu‐Oである。「オリンピックの競技場予定地を視察したついでに、その外部化粧室の設置予定地も見学したっぽい」……今更だけど、地球の扱いがヒドイなあ。
「《ハドルツ》には入れんじゃろう?」と、続いて訊いたのはスピ=ヤビノであり、それを補足するようにショワ=ウーが、「そうだ。我々住人――つまり、死者の親族以外は降りられないハズだ」と、言った。
すると、コンピューターの小型モニターを移動させながらMrが答えた。
「これも上陸はせずに……定期の宇宙船か何かあるの?それに特別室を作らせて周回軌道までは行ってる」
「そう言えば、」と、今度はジュージャ姫が声を上げた。「十年ほど前、父の果樹園の見学に帝国の方々が見えられたことが――」
「らしいね」と、Mr。「政治的な理由か知らんけど、公には行ってないことになってる」
「なるほどね――」と、ここでセイ・カハが言った。「オレの惑星には 《サカタッティ狩り》で来たし、《時主》の惑星には……アンタが連れて行ったんだっけ?」
(続く)